日本の政治は、まさに混沌としている。昨年、戦後初となる本格的な政権交代が実現したものの、政権をとった民主党は経済政策や外交問題で苦戦を強いられ、支持率が急落。6月2日、鳩山由紀夫首相と小沢一郎幹事長は、そろって辞任を表明した。民主党は引き続き政権を担うものの、求心力の低下は避けられそうにない。一方、下野した自民党も急速に求心力を弱めており、政権奪回のメドは立たない。政治はこのまま羅針盤を失い、漂流を続けるのか?
日本が「世界の大国」の名を欲しいままにした1980年代に長期政権を担った中曽根康弘元首相は、現在の政界に警鐘を鳴らす重鎮の1人だ。激動の戦後、高度経済成長時代、バブル経済時代、そして平成の「失われた20年」を一貫して政治の第一線から見つめ続けてきた中曽根氏の目には、今何が映っているのだろうか? (聞き手/ダイヤモンド・オンライン 原英次郎・小尾拓也、撮影/加藤昌人)
なかそね・やすひろ/1918年生まれ。群馬県出身。東京帝国大学法学部卒。元衆議院議員、内閣総理大臣。1997年大勲位菊花大綬章受章。内務省、大日本帝国海軍を経て47年に衆議院議員初当選、以後連続20回当選。自由民主党で科学技術庁長官、運輸大臣、防衛庁長官、通産大臣、自民党総務会長、自民党幹事長などを歴任し、82年から87年まで内閣総理大臣(第71・72・73代)を務める。首相在任中に行なわれた主な政策は、国鉄・電電公社・専売公社の民営化、プラザ合意など。2003年政界を引退。現職は、財団法人世界平和研究所会長、新憲法制定議員同盟会長など。
――昨年、戦後初となる本格的な政権交代が起き、長年政権を担っていた自由民主党が下野して、民主党政権が誕生しました。しかし鳩山政権は、発足からわずか8ヵ月目で崩壊。混迷を続ける日本の政界に、二大政党制は本当に根付いたのでしょうか? 評価を聞かせてください。
二大政党制が本格的に根付いたとは、まだ言えません。民主党は政策が安定していないし、支持勢力の恒久性も確立されていないから。
政権をとった民主党も、復活を狙う自民党も、努力をしているのはわかります。ただ現実には、先の衆議院選挙によって2つの大きなブロックができただけの話であり、今の政治体制は、長期に続く国民の本当の意志の上にでき上がったものではない。
このような状態では、「第三極」の台頭もあり得ない話ではないでしょう。