試験までの期間に応じて
学習間隔を変える

 学習時間を分散する最適な間隔について研究されるようになったのは、ここ数十年のことだった。毎日少しずつ、一日おき、週に一度……。いったい、どの勉強の仕方がもっとも効率が良いのか?

 今日が火曜日で、金曜日に歴史の期末試験があるとしたら、どう勉強時間を分散させればいいのか? 試験が1ヵ月後の場合はどうか。試験までの期間に応じて、勉強時間を分散させる間隔は変わるのだろうか?(中略)

 2008年、カナダのヨーク大学で心理学を研究するメロディ・ワイズハートは、カリフォルニア大学の同業者ハロルド・パシュラーとともに研究チームを結成し、先の疑問に初めてちゃんとした答えを与えるための大掛かりな実験を行った。

 まず、実験の被験者として幅広い年齢層から1354人を選んだ。選ばれたのは、オンラインで作業する「遠隔調査」の協力者として、アメリカ内外から登録したボランティアたちだ。

 彼らは、32のあまり有名でない事実を勉強することになった。

 たとえば、「スパイスの効いたメキシコ料理がもっとも食べられているヨーロッパの国はどこか?(正解は)ノルウェー」「雪上ゴルフを考案した人は誰か?(正解は)ラドヤード・キプリング」「1492年にコロンブスが新大陸に向けて出港したのは何曜日?(正解は)金曜日」「スナック菓子『クラッカー・ジャック』のパッケージに描かれた犬の名前は?(正解は)ビンゴ」というものだ。

 被験者にはこれらを学習する機会が2回与えられた。グループAの被験者は、2回の学習時間のあいだに10分の休憩しか許されなかった。グループBの被験者は、1日あけて2回目の学習に取り組んだ。グループCは1ヵ月あけて2回目にのぞんだ。

 このように1回目と2回目の学習間隔をグループによって変え、最長間隔は6ヵ月となった。また、覚えたことの最終試験を受けるタイミングもグループによって変えた。こうして、パターンは全部で26種類となった。

 研究チームは26種類すべての結果を比較し、試験の日程に応じた最適な間隔を算出した。「簡単に言うと、勉強時間を分散する最適な間隔は、いつまでそれを覚えていたいかで決まる」とワイズハートとパシュラーの研究チームはまとめた。試験の日程と最適な間隔は、表のようにまとめることができる。

 この表をよく見てもらいたい。これらの数字は厳密ではなく、どちらの項目も切りのいい数字にしている。とはいえ、厳密な数値にかなり近い。

 試験が1週間後にあるときは、学習時間を2回に分け、今日と翌日、または今日と明後日に勉強する。学習時間をさらに1回増やしたいなら、試験の前日にするとよい。

 試験が1ヵ月後なら、今日勉強して1週間後にもう一度勉強するのがいい(学習時間が2回の場合)。もう1回増やすなら、そこから3週間ほどあけて、試験の前日に時間を設ける。

 試験の日程が遠い(つまり、準備する時間がたくさんある)ほど、学習時間の1回目と2回目の間隔が広がる。試験までの時間と2回目の学習までの最適な間隔を割合で表すと、試験までの時間が長いほどその割合は減少することが、この実験で明らかになったのだ。

上表の左列2行目「試験までの期間 2カ月」は「試験までの期間 1カ月」の誤りでした。お詫びして訂正致します。

(※この原稿は書籍『脳が認める勉強法』の第4章から一部を抜粋して構成したものです。次回は12月30日(水)公開予定)