団塊世代の大量退職で労働人口の減少傾向が顕著となり、経験豊富なシニア世代に注目が集まっている。そうしたなか、人材不足に悩む企業と、優秀なシニアたちとをマッチングさせる新たなビジネスが生まれている。

 その一つが、人材コンサルティング会社、レイスが展開している人材紹介サービスの「顧問名鑑」。これは、上場企業の部長クラス以上を経験した人材を、中小企業に“顧問”として紹介するものだ。

 従来、シニアを対象とした人材ビジネスといえば、清掃や軽作業などが中心だった。だがレイスは、人脈の乏しさや、事業運営のノウハウ不足に悩む中小企業経営者のニーズに応えようと、かつてビジネスの世界で活躍していた人材の提供に特化している。

 たとえば、ある通信系ベンチャー企業は、旧態依然とした通信業界のなかで辛酸をなめていた。そこで顧問の紹介を依頼、顧問の人脈を使って大手通信会社のトップ層に食い込めたほか、総務省の独立行政法人が狙い目だとのアドバイスを受け、新規顧客の開拓にも繋がったという。

 さらに顧問は、取引先の社長が大の酒好きだといった情報まで提供、その企業の創業記念日に酒を贈ることで関係を深められたことなどもあったといい、ベンチャー企業の社長は、「まさに目から鱗で、事業部ごとに顧問がいてもいいくらい」と手放しで喜ぶ。

 月の顧問料は、週2~3回の出社でわずか数十万円。フルタイムで雇えば年間1000万円は下らない優秀な人材であるにもかかわらずだ。そうした割安感もあって、サービスの提供からわずか1年2ヵ月しか経っていないにもかかわらず、登録企業は610社にも上る。

 一方、顧問になるシニアたちにも、単なる名誉職ではなく、「自分の経験や知識をいかんなく発揮できて働きがいがある」と大好評。おまけに複数の企業で掛け持ちもできるため、現役時代と同程度の収入を得ている人もいて、今や登録者数は400人を超える盛況ぶりだ。

 こうしたシニア世代を対象としたマッチングビジネスに乗り出しているのは、なにもレイスだけではない。ここ最近、人材派遣会社を中心に新規参入する企業が増加、新たな人材ビジネスの一つとなりつつある。今後、こうしたビジネスが成長して定着していけば、団塊世代の新たな働き方が生まれる可能性を秘めている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)