2015年12月24日、政府予算案で児童扶養手当の増額が決定された。ひとり親家庭の一部しか対象にならず、金額も十分とはいえず、しかも政府予算案では「不正受給対策の強化」がセットにされている。

福祉給付、特に現金給付を増額するのは、容易なことではない。増額以外の方法で、「優しさ」「絆」「民間の力」といった精神論によるのでもなく、厳しい状況にある人々を経済的に助ける方法は何もないのだろうか?

低所得層向け給付の問題点を
鮮やかに浮かび上がらせた記事群

児童扶養手当の増額が決定されても、ひとり親家庭の家計は改善しないままだ

 年明け早々の2016年1月4日、通常開会が開会された。審議の大きな柱の一つは、2016年度予算案だ。軽減税率・TPPと国内農業に対する補助金など、論点は数多いが、遅くとも年度内には成立すると見られている。前回レポートした児童扶養手当の増額も、予算案全体の中で議論されることになる。

 政府予算案には、ひとり親家庭を対象とした児童扶養手当の36年ぶりの増額が盛り込まれた。しかしながら増額幅は「充分」とはいえない上、ひとり親世帯に対する「不正受給対策の強化」がセットにされようとしている。児童扶養手当の「不正受給」とは、事実上、ほぼ「事実婚の疑い」。成立する予算案から「不正受給対策の強化」が削除され、金銭的にも時間的にも精神的にも余裕のない「ひとり親」たちと子どもたちが、プライバシーの詮索で現在以上に苦しめられないことを願うばかりだ。

 さて、この政府予算案が発表された3日後の2015年12月27日、児童扶養手当をテーマとした記事が、朝日新聞の1面・2面に掲載された。デジタル版では、児童扶養手当を受給している世帯の収入が不安定であることの問題点を浮き彫りにした「ひとり親 波打つ収入、綱渡り 児童扶養手当4ヵ月ごと」、2013年9月に起こった関東地方の母親による女子中学生殺害事件を、母親の収入状態の変動から検証した「強制退去の日に娘殺害 収入波打つ中、借金重ね生活破綻」、低所得世帯への現金給付を「渡し方」に着目して経済的破綻を防ぐ方法を提示した「(視点)低所得世帯への公的手当、毎月支給が有効策」の3本となっている。いずれも、錦光山雅子記者の手になるものだ。ひとり親家庭が、貧困の上に数多くの問題を積み重ねてしまう構図が、背景とともに浮かび上がってくる記事に、私は強い衝撃を受けた。