キラーコンテンツとして
東京大学の研究室を設置

 洪は、東京大学総合研究博物館の特任教授を兼務(現職)しており、数年前から最先端の研究の展示を大学外で行う「スクールモバイルミュージアム」という活動を行っている。少子化によって余裕のできた小学校の教室にミュージアムコンテンツを持ち込み、子どもたちに“本物”に触れる機会を提供してきたのだ。

 実はこの実験的な活動を東京ドーム側が視察、本物を見せるコンセプトに共感し、東京大学との連携が実現したという。

 具体的に「宇宙ミュージアムTeNQ」では、宇宙科学の最先端を紹介する「サイエンス」というコーナーに、東京大学総合研究博物館の研究室分室となる、ガラス張りのリサーチセンターを設けた。演出ではなく、実際に研究者や学生がここで太陽系探査の最先端の研究を日々行っている。ときには海外からの研究者も訪れる。

「例えば、昨日火星から送られて来たばかりの最新のデータを、サイエンスのコーナーで展示する。ミュージアムにはバックヤードとフロントヤードがあり、バックヤードの素材を展示するには時間がかかるのが通常ですが、ここではその時間的な境界を無くす試みを行った。東大の研究室の成果をリアルタイムで見られ、かつ宇宙の謎が解明される“本物感”を味わってもらえる、研究から展示への“プロセスのミュージアム”とも言えます」

 この産学連携は、東京ドームが東京大学総合研究博物館に寄付を行い、太陽系博物学寄付研究部門が研究室分室をミュージアム内に設けるというスキームにより成立した。そして、このリサーチセンターは、文字通りミュージアムのキラーコンテンツとなっている。

宇宙科学の最先端を紹介する「サイエンス」の部屋では、東京大学のリサーチセンターの他に、火星の迫力あるパノラマも設置。本物の火星の隕石に触れることもできる(撮影:フォワードストローク)