2000年の結成で、ピアノ、ベース、ドラムの伝統的な三重奏団です。リード・アンダーソン(b)、イーサン・アイヴァーソン(p)、デヴィッド・キング(d)が創る音楽は時代の遥か先を行きます。その様は、20世紀初頭、イーゴリ・ストラヴィンスキー が伝統的な管弦楽団を使って革新的な響きを生み出したことと重なります。実際、彼らは、ストラヴィンスキーの代表的な管弦楽曲「春の祭典」をピアノ三重奏で大胆に再現しています(写真)。

 そんなザ・バッド・プラスが、2014年1月、米国中西部のミネソタ州ミネアポリスのテラリウムスタジオに参集します。実は、ミネアポリスは3人の故郷でもあります。ミネアポリスの1月の平均最低気温は摂氏マイナス15度。極寒の中、一枚の音源が完成します。「イネヴィタブル・ウェスタン」です(写真)。

 収録された全9曲は全てオリジナル楽曲です。3人のメンバーがそれぞれ3曲づつ持ち寄っています。それ故、それぞれが担当する楽器の個性が色濃く出ます。世のピアノトリオにありがちなピアノが主人公でドラムとベースが脇役という感覚は微塵もありません。3人の演奏家が対等な立場で音楽を共に創造するという明確な意思の表明です。独奏楽器としてのドラムとベースの可能性に溢れています。

 それ故、ここに収録されている響きは、伝統的なジャズとは一線を画しています。敢えて分類すればピアノ・トリオのジャズですが、ザ・バッド・プラス流の全く新しい音楽です。前衛と革新がポップな感覚と共存共栄しているのです。スパイスの効いた旋律には耳に優しい訳ではありませんが、ふとした瞬間に訪れる懐かしい感じが絶妙です。鋭角的で高純度の演奏は、彼らの技量の賜物です。21世紀の最先端の音楽がここにあります。

 一度聴き始めると、いつまでも聴いていたくなる音楽です。

 そして、今はアヴァンギャルドに響きますが、時間の経過とともに耳に馴染み、いずれ21世紀の主流の響きへとなっていくでしょう。

オスロで生まれたジャズの進化を象徴する音盤

 ジャズ創世記のベニー・グッドマンと21世紀の最先端のザ・バッド・プラスの間には、多数のジャズの巨人がいます。

 一人選ぶとすると、パット・メセニーです。