もっとも、個人の年齢が高まるほど、その仕事能力にはバラつきが大きく、画一的な定年退職制は、企業にとっても貴重な人材を失うことになる。すでに高齢者の活用が進んでいる中小企業と比べて、改革が必要なのは年功賃金の度合いの大きな大企業である。

女性管理職の増加にも必要

 日本の男性と比べた女性の賃金格差は68%で、80~90%の欧米諸国との差は大きい。この主因としては、日本の女性の離職率が男性と比べて平均的に高いことから、年齢や勤続年数を基準に昇進する雇用慣行の下では、不利となることがある。安部総理は、女性の管理職比率を世界並に30%に引き上げる目標を掲げているが、「(女性差別ではなく)単に管理職年齢層の女性が少ないため」という企業の内部昇進の論理に阻まれている。

 企業が本気でダイバーシティー戦略で女性管理職を求めるなら、仮に社内に適任者がいなければ、社外から調達すれば良い。管理職をよく働いた中高年社員の処遇ポストではなく、企業の中枢を担う重要な職種として位置づけなければ、低成長社会では生き抜けない。

 女性管理職の増加は、高齢者のような保護策ではなく、社内外の公平な競争の結果、自然に実現するものといえる。女性の働き方は男性よりも多様で、流動性が高い。これまでの政府の政策は、育児休業の充実等、女性を無理に男性の働き方に合わせることへの支援であった。今後、男性の働き方も流動的なものとなれば、男女間の離職率の差は縮小する。現に、利益至上主義の外資系企業で、むしろ女性の管理職比率が高いことは、男女の別なく仕事能力主義を貫いているためとみられる。

 職務給を前提とした同一労働同一賃金は、労働者間の公平性の観点だけでなく、職種別労働市場の範囲を広げ、特定の企業に依存しない流動的な働き方を普及させることにもなる。今後、日本の雇用環境が、労働力の減少で「売り手市場」となって行くことは、女性や高齢者を含む大多数の労働者にとって、雇用の流動化のメリットが大きくなることを意味している。