数年前、静岡県の関係者が訪ねてきて、静岡空港開通後の中国人利用客をどう確保すればいいのかと意見を求められた。私は、静岡県と浙江省との友好姉妹省県の関係を活用して、伊豆の別荘地を中国に売り込めばいい、と提案した。

 民営企業が発達する浙江省は、金持ちが多いことで知られる。しかも、浙江省の金持ちは不動産に対する執着で有名なのだ。中国では、浙江省の金持ちがどこかの都市で不動産を買い求めるとたちまちそこの不動産の販売価格が急騰する。

 浙江省の省都・杭州と静岡空港を結ぶ直行便ができると、移動時間もそうかからない。伊豆なら冬も暖かいし、別荘を利用できる期間も長い。伊豆の別荘を買ったら、浙江省の金持ちたちはそれをステータスとしてビジネスのお客さんへの接待に使うだろう。そうこうしているうちに伊豆が中国で知られ、人気度も上昇し、より多くの人が静岡を訪れてくるだろう。

 捕らぬ狸の皮算用と言われれば、その時点では確かにそうかもしれない。しかし自信はあった。中国の不動産価格が急激に高騰し続けており、日本の、特に地方の不動産が格安に見えるという事情を知っていたからだ。

 だが、静岡県の関係者たちは最終的には私の提案を採用しなかったようだ。おそらく即効性がないと思ったからだろう。

 意外なことに、隣の韓国でまるで私のその提案をそのまま採用したような地方がある。済州道だ。

 今年5月3日付の朝鮮日報電子版(中国語版)の報道によると、地元の不動産開発会社Raonリゾート開発会社が上海の150名の不動産投資希望者を済州島に招き、建設中のリゾート村Raon Private Townを見学させ、3日間にわたる商談で、合計306億ウォン(約1億8000万人民元、約23億円)に上る58もの売買契約を成立させたという。そのうち、面積290平米以上の一戸建て住宅が3件、面積180平米のタウンハウスが35件、120平米の住宅が20件、平均価格は1坪(約3.3平米)当たり1000万ウォン(約72万円)だという。