下請代金支払遅延等防止法(下請法)の順守に厳しい目が向けられている。
近年、HCもPB(プライベートブランド)商品の製造委託やリフォーム事業の施工で下請協力業者を活用する機会が増えている。そのような取引に伴う法規制をきちんと理解していないと、勧告などにより企業イメージを損なう可能性も出てきている。いま、ここで下請法とは、どのようなものか、確認しておきたい。
同法に基づく勧告などの処置が見られるのは、協力事業者から「早期決済奨励金」として、取引金額に一定率を乗じた金額を減額するなどしたケース。下請代金の減額は下請法で禁じられており、違反行為と見なされる場合がある。
下請法は、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を目的として平成16年度に施行された。独占禁止法で禁止されている「優越的地位の濫用」を下請取引に限定して、(1)取引事業者の資本金、(2)取引内容、を類型化してわかりやすくしている。
下請取引の認定については、事業者の資本金により、(1)資本金3億円を超える大企業、(2)1000万1円~3億円未満の中小企業、(3)1000万円未満の零細企業の3種類に区分している。下請法では、取引の発注者が資本金区分で上位にある場合、「親事業者」として「優越的地位にある」ものとして扱う。
また取引内容は、(1)製造委託、(2)修理委託、(3)情報成果物作成委託、(4)役務提供委託の4種類が区分されている。ここでいう情報成果物は、コンピュータソフトなどのプログラムや映画・放送番組、ポスターデザイン・設計図などが対象となる。また役務提供委託は、一度請け負った役務を再委託する取引を対象としている。
下請法で規制されているのは主に「買いたたき」と「下請代金の減額」である。これらの行為には、思いがけない内容も含まれるので注意したい。
「買いたたき」とは、「発注した内容と同種または類似の給付の内容に対して通常支払われる対価に比べて、著しく低い額を不当に定めること」と定義される。相場や過去の事例と比べて、不当に低い金額で取り引きされた場合、これに該当するのだが、過去にはこんな事例も対象となった。
ある親事業者が下請事業者に対して、業績悪化により通常よりも低い金額での発注を要請し、このときに「業績が回復したときに、通常の金額に戻す」と約束したにもかかわらず、業績回復後の取引に下請事業者との十分な協議も行わず、低い水準で価格を据え置いた時だ。この約束不履行も違反行為になる。
また「下請代金の減額」は、発注時に定められた金額から一定額を減じて支払うことを全面的に禁じている。減額の名目・方法・金額の多少を問わず、また下請業者との合意があっても、下請法違反となるので注意したい。この取引では、下請事業者と合意することなく、下請代金の銀行口座への振込手数料を下請事業者に負担させた場合も違反となる。
このほかにも、物品などを受け取った日から60日以内で定めなければならない支払日までに下請代金を支払わないことも「下請代金の支払遅延」と見なされ、違反行為である。
親事業者は、下請事業者にとって不利益となる行為をしないように配慮する必要があるが、下請事業者も不利益な行為を受けた場合、すみやかに公正取引委員会に相談するのがよい。この場合、公取も守秘義務を負っており、相談者の立場も最大限に保護される。
親事業者は下請事業者に対して常に優越的立場にあるが、下請の協力事業者なしにビジネスを円滑に進めることは難しいのも事実。「親事業者と下請事業者は対等の立場にある」と認識していた方がよいだろう。
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