今回のサッカーワールドカップにおける日本代表の当初予想を覆す活躍は、企業経営や組織づくりにおいてもいくつかの示唆を与えてくれたように感じています。そこで今回は、サッカー日本代表に学ぶ強い企業や組織のつくり方について、考えていきましょう。

なぜサッカー日本代表は
戦略上のジレンマから脱却できたのか

直前の4連敗が功を奏した?<br />サッカー日本代表に学ぶ「強い組織づくり」の極意

「決定力不足が大きな課題だ!」
 「戦略がブレる岡田監督に問題がある!」

 ワールドカップが始まる前の段階では、サポーターを中心としたサッカーファン、TV・新聞等のマスコミから、日本代表に対する様々な批判がありました。

 そういった批判はもっともだなと思う反面、日本代表の岡田監督には乗り越えなければならない戦略上のジレンマがあり、非常に大変な役割であると感じていました。

 アジア予選における日本代表は、韓国代表等と肩を並べる強豪国であり、そこにおける戦い方は当然「点をとりにいって勝つ」戦略をとらなければなりません。ビジネスに置き換えると“強者の戦略”ということになるでしょうか。よって、弱い相手を攻めあぐねるような試合が続くと、「決定力不足」といった意見が噴出するのを記憶されている方も多いと思います。

 しかしながら、ひとたびアジア予選を勝ち抜いてしまえば、日本代表のポジションは下から数えた方がはやい“弱小国”です。アジア予選を勝ち抜いてきた「点をとりにいって勝つ」戦略がそのまま通用するとは到底考えられません。かと言って、予選突破という成功を果たしたチームを抜本的に変えるという決断も容易にできることではありません。

 2002年の日韓ワールドカップで、日本代表と韓国代表はグループリーグを突破し、特に韓国代表はアジア勢初のベスト4という快挙を成し遂げました。全ての試合がホームという地の利も当然ありますが、何よりも予選を免除され、世界の強豪国と戦うための明確な戦略を貫くことが可能だったことが大きな要因だったと思われます。

 以上のような視点から、今回はやはりグループリーグを勝ち抜く厳しいだろうという予想を多くの方がしていました。しかし、ワールドカップ前の国際親善試合4連敗という事実が、結果としてジレンマからの脱却につながりました。岡田監督は、「点をとられない」戦略への変更を決断するとともに、その戦略を実行するための最適なメンバーへの入替を断行したのです。