その上、進路指導が廊下で行われ、5~15分程度の立ち話で済まされていた。万引きの事実確認については「生徒の返事が曖昧で明確な否定もなかったから、確認がとれたと判断していた。一方、自殺した生徒は、進路をめぐる一連のやりとりについて「どうせ言っても先生は聞いてくれない」と保護者に話していたという。

 実際に万引きしていた学生が、中学校の推薦をもらって、高校に合格していたという事実も発覚した。驚かされたのは、この事実を報道陣に質問された校長が「この子はこの時の一回だけでした。その後、頑張って生活をしてきて、彼なら推薦できるだろうという判断ですので、推薦を12月22日の段階で出しました」と説明したことだ。それなら、自殺した学生の推薦を頑なに拒んだのはなぜだったのだろうか。

 これらの事実が少しずつ明るみに出る度に、中学校は厳しい批判に晒された。これらのあまりに杜撰な対応は、すべて外部からの目が届かない密室で、中学校に曖昧な「権限」が与えられてしまっていたことから起きているのである。

学校が曖昧な権限を持つことは
モンスターペアレンツの出現にもつながる

 学校が密室の中で、曖昧な「権限」を行使できる状況は、もっと深刻な問題を引き起こしている可能性もある。それは「モンスターペアレンツ」の問題だ。

 繰り返しになるが、学校が曖昧な権限を持つことによって、学校側と生徒側の間に、ある種の「権力関係」を生じることになる。それは、学校側が不当に権力行使するリスクを高めるが、それに加えて、その権力を悪用したいという親(モンスターペアレンツ)の出現を招いてしまうというリスクもあると考える。

 今回の事件は、おそらくレベルの高い高校の推薦入学を巡って起こったことのようだ。だが、推薦入学の問題は、レベルの高くない高校への進学を巡っての方が、実はより多く起こっているように思われる。

 現在、事実上「義務教育」化しているといっても過言ではないほど、高校への進学率は高くなっている。誰でも高校へ行くのが当たり前という状況で、素行不良や非行歴のある学生でもどこかの高校に入学させないといけないことが、中学校にとって頭の痛い問題となる。