ビジネスの「敵の意表を突く勝利」を実現する戦略とは
ビジネスにおいても少数側が勝つには、意表を突く勝利を目指すことが効果的です。では敵の意表を突くことは、どのようにすれば実現できるのか。世界最大のスーパーマーケットチェーンである米ウォルマート。同社は1969年にサム・ウォルトンによって創業された後発企業でした。しかし同社は世界一となり、一歩早く規模を拡大させていたKマートは2002年に破産しています。
ウォルマート勝利の最大の理由は、これまでと違う同社の出店形態にありました。スーパーマーケットの出店には10万人以上の人口が必要とされていました。ところが、ウォルマートは一万人規模の都市に、業界の常識を無視して小型店を出したのです。彼らは小型店をネットワーク化して、150店舗で100万人の人口をカバーするという別の勝算を持っていたからです。
ウォルマートは業界の常識を打ち破り、新しい成功の定義を見つけていたのです。常識にばかり目を向けたライバル企業は、ウォルマートがなぜ「市場がないはず」の場所に出店するのかわかりませんでした。この出店システム変更から、ウォルマートの優位は10年以上続きます。
日本一社員が幸せな会社と呼ばれる、岐阜県の未来工業は年間休日140日、全員が正社員という驚きの制度を持っています。同社は多くの会社と逆の目標をあえて掲げることで、極めてユニークかつ収益性の高い経営を実現しています。
■一般的な企業と違う目標で勝負する
・お客さんにウケる製品づくりにはコストをかけろ
・赤字製品でもお客さんが喜ぶならつくる
(山田昭男『働き方バイブル』より)
未来工業は、電気工事に使われるスライドボックスで、顧客の使い勝手が良くなる工夫にあえてコストをかけた結果8割もの市場シェアを獲得。また、ケーブル滑車という部品では利益の出る売れ筋の3製品だけでなく、お客様側にとって必要な残りの赤字122製品をあえて生産。市場シェア9割を独占し、製品全体としての黒字を達成しています。
ライバル企業も含めて全員が目を向ける場所で戦い、同じポイントで勝負を仕掛ければ、数の理論で大手企業に少数勢力が逆襲することは、ほとんど不可能になります。ウォルマートや未来工業のように、成功の定義を変えて戦うことが重要なのです。
ローマの大軍が全滅したカンネーの戦いでは、ローマ側は「中央の突破」が勝負の鍵だと考えましたが、ハンニバルは「敵の完全包囲」こそが勝利の鍵だと考えていました。どれほど勇猛な兵士でも、突撃する予定の正面ではなく、予想外の方角から思ってもみない相手に攻撃されることにはスキがあり、弱いものだからです。
相手が「攻めてくるだろう」と思わない場所を戦場とすること。そしてライバルとは違う点を勝利の鍵として設計すること。この2点が敵の意表を突く勝利を生み出すのです。
(第3回は3/28公開予定です)