平日、毎日通う会社。1日のうち多くの時間を過ごす会社は、本来ならば「身近な場所」であるはず。しかし、人間には「心の距離」というものがあり、いくら毎日通う場所であっても「身近」と感じるかどうかは人それぞれかもしれない。

「一般社員の約半数は、会社との距離を『遠い』と感じている」。こんな調査結果を、JTBモチベーションズ(東京都港区)が発表した。

 調査対象は、従業員500人以上の企業に勤める会社員(経営者・役員覗く)、男女515人。調査地域は全国。調査方法はインターネット。

「会社との距離が遠い」は
不満の表れ!?

 アンケートで、会社との心の距離感について、「遠い」と答えたのは一般社員のうち48.3%。「遠い」と感じている率は、係長・主任クラスで40.2%、課長・次長クラスで40.9%、部長クラスで33.3%と、役職によっても違いが見られる。

毎日通っても“身近な場所”にはならない?<br />一般社員の約半数が「会社との距離感は遠い」

 多くの人が集まる組織であるだけに、職場内の人間関係が影響を及ぼしている可能性は高い。同じアンケートで、「上司との距離が遠い」と感じているのは一般社員で32.6%。「社長との距離」については、「違う国にいるほど遠い」「違う星にいるほど遠い」と答えた一般社員が合わせて47.1%だった。遠い理由としての回答は以下のようなものがあった。

【上司との距離が遠い理由】
「建前論が多すぎ」(33歳男性/一般)
「適切な評価をされていない」(34歳男性/一般)
「意思疎通がうまくいっていない」(30歳女性/一般)
「会社の方針や将来像が違う気がする」(32歳男性/係長クラス)
「考え方の違い」(55歳男性/部長クラス)

【社長との距離が遠い理由】
「社長とは一度も会ったことがない」(27歳男性/一般)
「自分のことしか考えていない」(31歳男性/一般)
「経営戦略がわかりにくいから」(42歳女性/一般)
「上と下との考えが違いすぎる」(34歳女性/係長クラス)
「話す機会がない」(52歳男性/課長クラス)

 上司や社長との「距離が適切である」と感じている人たちのコメント、「尊敬しているから」(27歳男性/一般)、「理念が共感できるから」(34歳女性/係長クラス)、「社員の意思を尊重するから」(27歳男性/一般)、「世の中に貢献しようとしている」(48歳男性/課長クラス)と比べると差は歴然。「距離が遠い」というのは、ほとんどの場合で「不満がある」状態だということがわかる。

今の社員が求めるのは
「会社の理念に共感できること」

 アンケートを実施したJTBモチベーションズは、「会社と距離を感じている人ほどモチベーションが低い」と指摘する。会社と自分との距離を「すぐそばにいる(ほど近い)」と答えた人のうち、「モチベーションが高い」と答えたのは66%だったのに対し、「違う星にいる(ほど遠い)」と答えた人では10.3%という結果だった。

 それでは、会社との距離を縮めるために彼らは何を求めているのだろう。

 最も多かったのが、「会社の理念や戦略を認識し、共感できる」(19.8%)こと。「やりがいのある仕事ができる」(17.7%)、「社内コミュニケーションが活発で、全社的な動きが感じられる」(17.3%)と続く。逆に少なかったのは、「仕事を通じて自分が成長できる」(4.7%)、「会社の名前や業務内容が、世間に認められている」(3.7%)、「設備や立地など職場環境に満足できる」(1.7%)だった。

 JTBモチベーションズでは、距離を縮めるためには、社長からの発信、社内コミュニケーションの活性化、また、上司と部下の理解・意識のギャップを解消することなどが重要だとしている。この距離を縮めることは、「モチベーション向上、業績向上につながると考えられ、会社経営の重要なテーマ」とも指摘する。

 モチベーションと関わる問題として考えてみると、会社との距離感を「遠い」と感じている一般社員が約半数というのは、なかなか心配な結果。アンケートの結果を見る限り、一見自分の成長ばかり考え、社内でのコミュニケーションに関心がないように見える部下も、意外に上司から意見を求められ、声をかけられることに飢えているのかもしれない。上司からすると受け身にも見えるだろうが、大企業にありがちな個人の疎外感を払しょくするには、会社の態勢から変えることが必要だ。

(小川たまか プレスラボ)