「老後のお金、心配ですよね?」と言ってさまざまな金融商品をすすめてくる営業マンやファイナンシャル・プランナーは、おそらくファイナンス理論の考え方を語ろうとはしないだろう(語るにしても、なんらかの「脚色」が施される可能性がある)。顧客の目を「お金」に引きつけ、その商品を買わせることが彼らの仕事だからだ。
しかし、人間はいつか死ぬ。人生は有限だ。
だからこそ、お金を含めすべての価値は時間の中で考えなければならない。
価格表示や現金は、そうした時間観点を見失わせ、リスクの見積もりを狂わせ、選択を誤らせる。だからこそ、ファイナンスという学問が生まれたのだとも言える。
「株なんて買ったことがないし、マンション投資なんてとんでもない!」という人も、まずは「時間とリスクを加味しながら価値を見極める」ことをふだんの生活から意識してみてほしい。
ちょっとした買い物で迷ったとき、ボーナスを定期預金に入れようとしているとき、生命保険への加入を検討するとき、家を買おうとしているとき、ファイナンスはこれまであなたが見落としていた価値に光をあててくれるはずだ。
さて、この連載もついに折り返し地点まで来たことになる。
ここまでファイナンス理論の基本的な考え方を学んできたが、次回からはこれを元に4つのノーベル賞理論を見ていくことにしたい。
・MM理論
・現代ポートフォリオ理論
・CAPM理論
・オプション理論