案山子でも当選できる!?
選挙は“風”と“華”が勝敗を決める

「選挙巧者」として知られる公明党。その選挙を幾度となく手伝ったことがある、同党支持母体・創価学会の元メンバーがその実情を明かす。

「選挙では“風”が命です。追い風が吹いていれば、それこそ“案山子”(かかし)が出馬しても当選できる。しかし“向かい風”だとそうはいかない。どんなに高潔な人格を備え、政策立案能力と実行力を持っていても、当選はおぼつかない。選挙とは無情です」

 この“追い風”は政局とも関連する。先にも述べたが野々村被告が兵庫県議に初当選した2011年当時、政局の“風”はメディアの寵児から大阪府知事へと転身した橋下徹氏と、彼が率いる「大阪維新の会」に吹いていた。事実、この年に行われた統一地方選挙では、初戦にもかかわらず大阪府議選で定数109議席のうち57議席を占め、自民党、公明党をはじめとする既存の政党を抑える“与党”となる躍進ぶりをみせている。

 追い風が吹きまくっていた「大阪維新の会」と混同してもらえることを狙って「西宮維新の会」を名乗った野々村被告は、善悪は別として、この“風”の重要性をきちんと認識していたと言える。

 “風”の次に重要なのが“華”。時に“花”という字にも置き換えられるが、これは候補者自身が持つ経歴を指す。

「若さ、ルックス、有名大学卒、元官僚や大手上場企業勤務などの華々しい経歴を持ち、“風”が吹けば当選の可能性はぐっと高くなる」――。自民党、公明党、民進党、共産党と、政党がどこであっても、選挙を手伝った経験のある者は皆、こう口を揃える。野々村被告も関西大学出身の元公務員。経歴は十分だ。

 野々村被告は西宮県議になる前、兵庫県太子町長選など3度も選挙に落選しているため、「兵庫県議当選はまぐれだった」との声もあるが、決してそうではない。いずれの選挙でも落選したとはいえ、得票数はあながち低いものではなかったのだ。08年の兵庫県太子町長選では485票、同年の兵庫県西宮市長選では6184票、09年の兵庫県議補欠選(西宮市選挙区)では3万3359票、10年の西宮市長選では2万5924票の得票である。当選した11年の兵庫県議選では1万1291票だった。

 当時から今回の事件まで野々村被告を取材してきた地元紙記者は、その善戦ぶりをこう評す。「もし野々村被告が選挙区選びを入念に行っていれば、初出馬から地方議員として当選していた可能性はある。初戦の太子町長選でも、泡沫候補扱いだったにもかかわらず485票もの得票ですから」

 実際、地方選出馬経験のある者、選挙戦を運動員として手伝った経験のある者たちも、「野々村被告が得票した票数ならば選挙区さえ選べば、4回も落選することなく当選できただろう」と話す。

 今、日本で最低得票数で当選した地方議員の得票数は「13票」だ。東京都青ヶ島村での話である。青ヶ島村議会は議員定数6、13年に行われた村議選では、この6議席を7名の候補者で争った。その結果、トップ当選は18票の2人、これに17票、15票、14票、そして13票の最下位当選者が続く。次点は8票、トップ当選者との票差は10票、最下位当選者とのそれは5票だ。人口170人あまりの日本でもっとも小さな行政区の話である。

 こうした地域では、「自分に投票してくれる一族郎党20人を引き連れて移住すれば“議員センセイ”になれる」という声もあるくらいだ。

 野々村容疑者の例や、この東京都青ヶ島村議選の例は、「3バン」(地盤・看板・鞄)がすべて揃っていなくとも、その気になれば誰でも地方政治家になれる可能性があることを示している。