被後見人にとって心強い存在になる「市民後見人」

 今回成立した成年後見利用促進法は議員立法。原案は2011年から公明党主導でまとめられ、民主党(現在の民進党)や自民党など超党派議員で調整されてきたが、政権交代もあって国会への上程が遅れていた。

 後見人は、子どもや配偶者、兄弟姉妹などの親族が制度開始時には91%も占めていた。

 その後、一人暮らし高齢者や老々介護世帯が増えるとともに、親族後見人の成り手が少なくなり、司法書士や弁護士、社会福祉士など国家資格の専門職後見人が増えてきた。

 最高裁がまとめた2015年の成年後見調査によると、同年に後見人が就いた3万4920件のうち親族後見人は29.9%と初めて30%を割りこんだ。一方で、専門職後見人は引き続いて増加し63%に達した。

 だが、これから高齢化率が高まるとともに需要が増えていくと、専門職後見人は人数が限られているため頭打ちになる。そこで、専門職ではなく一般市民へと裾野を広げようとしたのが新法の狙いだ。

「市民後見人」の育成である。今でも、自治体などの養成研修を受け、家裁から選任されれば後見人になれるが、2015年は全体のわずか0.6%、224人しかいない。

 新しい法律では、市民後見人の育成と活用を図ることで「人材を十分に確保する」と明記した。そのために必要な法整備や財政上の手当てなどを速やかに講じるよう政府に義務付けた。地方自治体にも、地域の特性に応じた施策作りと実施を求めた。

「もし、自分ならどうしたいのか」を考えながら判断するのが後見人。その意味で、「仕事」に徹する専門職後見人よりも、「将来は自分も同じような立場になるかもしれない」と我が事として動く市民後見人の方が、被後見人にとっては心強い存在だろう。

 市民後見人になるための研修時間は通常50時間を超えており、職場に勤務しながらの通うには、相当の根気がいる。しかし、「悪質な訪問販売から家族の資産を守ることができるなら、たいした労力ではない」と、週末の朝早くから研修に顔を出すサラリーマンもいる。

 厚労省は2011年に老人福祉法を改正して、成年後見人の育成を市町村の努力義務として研修に発破をかけている。地元のNPO法人などを活用して熱心に取り組む自治体が現れているが、まだまだ少なく、全体としては腰が引けている。

 新法では、首相を会長にして官房長官や法相、厚労相、総務相などを集めた「成年後見制度利用促進会議」を内閣府に設ける。専門家による委員会に対して、国民への周知策や制度の普及を図るための基本計画案を諮問、それを踏まえて3年以内に閣議決定する。