トランプ集会会場に着くと、反トランプ派の若者たちが、駐車場に向かう全てのクルマを待ち構えていた

 会場近くに着くと、駐車場に車を止めるだけでも1km以上の渋滞ができていた。SUVやトラックなど大型車の長い列が続く。「トランプ講演SOLD OUT!」という電光掲示板が見え、ヤシの木に囲まれた入り口に近づくと、青空の下をスケートボードに乗った若い女性が「人種差別主義者のトランプを落選させよう!」と書かれた段ボール紙のプラカードを持って、通り過ぎていく。

2年前に同性婚をしたオレンジ郡住民のケリー。ユニークなサインで目立っていた

「いかにもカリフォルニアっぽいな」などと思っていると、いきなり十数名の反トランプ派にクルマの周囲をぐるっと囲まれた。

「ファック・トランプ! レイシスト帰れ! トランプを落とせ!」

 全員が大声で叫んでいる。

 1990年代後半からアメリカで取材しているが、白人の若者集団から有色人種の自分が「レイシスト」と叫ばれたのは初体験だった。どうやら、トランプ講演を聴きに来たトランプ支持者の1人だと思われたらしい。

 叫んでいる若者の1人はアノニマス風の面を被り、全身黒装束で、その横はヒッピー風のドレッドヘアの男性。顔が特定できないようにバンダナを巻いている。その横には、スケートボードに乗ったさっきの若い女性がいた。「ファック・トランプ! ファック・トランプ!」の大歓声が響く。彼らがかなり興奮しているのが、フロントガラス越しにわかる。

「トランプ支持者帰れ!」
筆者がひしひしと感じた危機感

 やばい、このままでは窓ガラスを割られるかもしれない。早く脱出しなければ。だが、ちょっとでも車を前進させれば、彼らに接触してしまうから、それもできない――。

 窓を開けて「取材に来たんだけど、通してくれる?」と説明するが、「ジャーナリストの証拠は?」と聞かれ、記者証も記者ノートもあえて家に置いてきたことに気づく。まずい。その後、5分以上「トランプ支持者帰れ!」の叫び声を聞かされ、やっと解放された。だが、すでに駐車場への入り口は鉄のドアでブロックされて閉ざされた直後だった。

 後ろを見ると、後続車が続々と囲まれ、同じ目に遭っている。業を煮やしたトランプ支持者の1人らしき男性が、「畜生! 講演が始まってしまう!」と言いながら、大型SUV車で植木の植わった分離帯に無理矢理乗り上げ、駐車場内に入ろうとしていた。

 その横を「アーバイン」とロゴの入った白いポリスカーが大音響のサイレンを鳴らして次々と通り過ぎる。地元のコスタメサ警察だけではなく、近隣アーバイン地区の警察も応援警備に当たっているのだ。反トランプ派の集団は、会場の全ての駐車場の入り口の前で立ち塞がる人海戦術を取り、数百人を軽く超える大人数となっていた。