クリントンかサンダース、どちらに投票するか、その答えまだ出ていないという。「ヒラリーの業績は評価できるし、バーニーの大学の学費無料化も支持したい」。自身を「どちらかというとバーニー的なソーシャリストの思想に近い」と言う彼女は、「心情的にはサンダースだが確実に勝つにはクリントンか」というジレンマで揺れているという。

「女性蔑視のトランプを大統領にさせない」と上半身裸で訴えるティエナン

 会場近くの門で、上半身裸でトランプに抗議し、同時に女性の権利とジェンダーの平等を訴えていたのが、22歳のティエナン・ヘブロンだった。ヘブロンのグループは、米国憲法に男女の完全平等を修正条項として追加するという目的のため、100万人の署名を集めるべく運動をしているという。

「トランプが大統領になる可能性を考えると恐怖でしかない。トランプには女性に対する敬意が全く感じられない。自分の実の娘ですら、性的な飾りとして扱い、自分の利益のために利用している」

 サンダースを支持する彼女は、人種的マイノリティやLGBTの権利を拡大するには、クリントンよりサンダースのアクティビスト精神に共感すると言う。公共の場でトップレス姿になり、警察に逮捕されることも厭わず、注目を集めようとするヘブロン。彼女の横を通り過ぎるトランプ支持者の中年男性たちは、「うわー、若い女の子が上半身裸だ。ラッキー!」と言いながら、嬉しそうにスマホでヘブロンたちを撮影し、通り過ぎて行く。

「メキシコとの国境に壁をつくるのは
人種差別でも何でもない」

トランプを支持するアジア人、カンボジア難民だったカハーン

 7時開演の1時間前には、すでに会場の扉が閉ざされ、チケットを持つ数千人のトランプ支持者らが会場に入れないという事態が起きた。マシンガンを持つ警官らが会場の入り口にずらっと立ち並び、空にはヘリコプターが飛び交う。あちこちで白熱した議論が起き、緊迫した雰囲気がさらに増している。

 トラック運転手の仕事を終えて会場に駆けつけたカハーン・ナックは、11歳の娘を連れてきていた。

「トランプを支持するアジア人」と書かれた紙を手に持っている。「トランプが立候補したことで、一気に目が覚めた」と彼は言う。「意味のないTPP条約を推進し、違法移民の権利を拡大しようとするオバマには愛想が尽きた」とナック。自身はカンボジアから難民として米国に移民してきた。難民申請をしてから、タイやフィリピンに移り住んで7年。やっと米国に移民することが許され、米国市民になった。

 会場付近にはためく何本ものメキシコ国旗を見ながら、ナックは言う。

「メキシコとの国境に壁をつくるというトランプの考え方は、人種差別でも何でもない。安全を守るためだ。国境を引き、入国制限する。そんなことは、どの国でも当たり前にやっていることだ。私の姪は、米国の移民許可が出るのを10年間待っている。合法的に移民するために辛抱している人間は大勢いるんだ」