いまの中国で、国民にとって最大の関心事は医療問題と子どもの教育問題だ。子どもにいい教育を受けさせるために、アメリカ、オーストラリアなど、海外へ移民する家庭も少なくない。
移民まで決断できない家庭でも、子どもを進学率のいい小学校に入れるために、その学校に入学できるエリアにある住宅を購入して、そのエリアの名目上の住民になる。このいい学校に入学できるエリアの住宅は中国では「学区房」と呼ばれる。不動産価格は目玉が飛び出るほど高い。
その「学区房」の販売価格があまりにも高いので、いっそのこと海外へ移住した方が割安という考えを持つ人たちも大勢いる。学区房組と移住組との間では、よくどちらが経済的に得なのかといったことが議論され、メディアの話題にもなっている。
ネット時代に登場したフリーランス教師
最近、こうした教育がらみの話題に、またひとつ新しい話題が増えた。現在の教育体制とは所属関係を持たない教師たちの登場だ。この種の教員は「独立系教師」と呼ばれている。わかりやすく言えば、フリーランスの教師だ。
フリーランス教師はインターネット全盛期の産物であり、ネットライブ授業というスタイルの登場後、教育業界で次第にこうした新たなグループが出現した。フリーランス教師はいかなる組織にも属さず、ネットのプラットフォーム上で自分自身の能力だけを頼みに学生を集めている。
大部分のフリーランス教師が利用しているのがO2O(オンラインツーオフライン)教育プラットフォームである。オンラインで支払い手続きをして、オフラインの教育機関でサービスを提供する者もいれば、完全にオンライン上で授業を行う者もいる。現在、比較的規模の大きなO2O教育プラットフォームには「軽軽家教」、「跟誰学」(日本語に訳せば「誰に付いて学ぶか」)、「瘋狂老師」(同じく「クレイジー教員」)などがある。
中国では、インターネットに付加価値をつけて活用することでできたビジネスモデルのことを「インターネット・プラス」というネーミングで表現している。そのインターネット・プラスの波の到来により、オンライン教育は今年いまだかつてないほどの盛況を見せている。あるデータによれば、2015年のオンライン教育の市場規模は399億元(約6663億円、1元=16.7円)に達し、なかでも好評を博している教育O2Oは多くの資本を引きつけている、という。
中国国内のメディアの報道によれば、軽軽家教は2015年2月に初回数百万元の融資を獲得し、同年4月8日には1500万ドル、5月には追加融資、さらに6月26日には1億ドルの融資を得ている。