「組織に対する義務」より「個人の権利」のフランス

 これが「個人の権利」が「組織に対する義務」と対等、または状況により優先する文化にある多くの欧州諸国では、事情が大きく異なります。例えば、フランスです。

 同国の雇用形態には大きく無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)があると前に示しました。また、前者が日本の正規雇用、後者が非正規雇用(契約社員やかパート)に近いと示しましたが、下記のように基本的に異なる点も複数あります。

(1)無期限雇用契約(CDI)・有期限雇用契約(CDD)ともに、フルタイムとパートタイム契約がある(パートの勤務時間要件は、一部例外を除き週24時間以上35時間未満)

(2)事業主は、一時的に発生する特別な業務や産休等で一時的に休暇をとる従業員の代替えケースでしか、有期限雇用契約(CDD)を結んではならない。また、その契約期間は1回の更新も含めて18ヵ月以内でなければならない(一部例外を除く)。

(3)事業主は、無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)との間で、各種手当、休暇、福利厚生、教育研修機会に関する権利について差別してはならない。

(4)事業主は、無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)との間で、「同一労働・同一賃金」の義務を負う

(5)事業主は、有期限雇用契約(CDD)の従業員に対し、雇用が不安定であることに対する手当として、契約期間中に得た額面給与総額の10%を、契約終了時(退職時)に、支払う義務を負う(つまり、同一労働ケースでは、無期限雇用契約[CDI]よりも有期限雇用契約[CDD]の従業員の方が賃金が高くなる)

 以上のように、フランスでは、無期限雇用契約(CDI)と有期限雇用契約(CDD)等に関する権利が法的に整備され保障されています。これは長い歴史の中で、労働者側が主張し勝ち取ってきた権利なので、従業員が放棄することは基本的にありません。たとえば、「同一労働・格差待遇」の状況で働こうとはしません。仮に、事業主がこうした状況で従業員を働かせていたら、これは違法行為にあたります。従って、従業員側は、自分の権利を侵されたと告発するか、仕事を受ける代償として昇給や昇格を要求します。

 以上、今回は、日本の正規・非正規問題の背景にある、日本人社会の2つの文化特性を取り上げ、フランスの状況と比較することで、これらを浮き彫りにしました。次回はこの格差是正にあたり、考慮すべき別の2つの文化特性に着目し、これを踏まえたパラダイムシフトを起こす必要性に触れます。