ゼロイチこそ、人間の本能にかなった仕事
とはいえ、むやみにチャレンジして遠回りするのももったいない。そこで、僕が経験してきたことをベースに、会社のなかでゼロイチを成し遂げるうえで、意識すべきエッセンスをまとめたのが『ゼロイチ』です。
「ゼロイチの主戦場は無意識である」
「プロフェショナルな素人が最強」
「おっちょこちょいは美徳である」
「アイデアだけでゼロイチは不可能」
「計画と無計画の間を進む」
「失敗してないのは危険な兆候」
「効率化がゼロイチを殺す」
これらのエッセンスは、不器用な僕が試行錯誤しながら紡ぎ出してきたものです。現場で悩んでいらっしゃるビジネスパーソンの参考になる部分が、少なからずあると信じています。
ゼロイチの魅力は何か?
僕は、楽しさだと思っています。
「これだ!」というひらめきが生まれる瞬間が心地よい。そして、そのアイデアを実現したいという情熱が生まれます。しかしそこからは、苦しい局面の連続。前例のないアプローチですから、どこを探しても「正解」などありません。先の見えない不安な道のりを、時には周囲からの反発を受けながらも、一歩一歩、進んでいかなければならないのです。しかし、ゼロイチへの情熱があれば、その「産みの苦しさ」さえも喜びに変わります。
そして悪戦苦闘の末にゼロイチを成功させたときには、このうえない喜びがこみ上げてきます。それまでの苦労のすべてが、「よい思い出」へと変わります。そして、次のゼロイチへの熱意が再び湧き上がってくるのです。それは、職業人として最高の幸せではないかと思います。
その原動力は、好奇心です。「見たことのないモノ」「見たことのない世界」への興味は、人間の原始的な本能のひとつ。誰もがもっている欲求なのです。自らの内にあるこの本能を満足させるために働くとモチベーションはおのずと生まれてきます。それに反して、「義務感」で働いてもモチベーションはすり減るばかり。だから僕は、ゼロイチこそが人間の本能にかなった仕事だと確信しています。
ひとりでも多くのビジネスパーソンに、ゼロイチを実現する喜びを体験していただきたいと願っています。それが、ひいては日本経済の活性化につながるはずです。本連載が、その一助となれば、それに勝る喜びはありません。