「敵は大手企業」
小さな漁協が世界で戦う覚悟

 ここまでできるのは、メーカーであるかのごとく、製品管理が「世界基準で」徹底しているからこそ、である。漁協がパーフェクトな指令塔として機能しているのだ。

「これぐらいじゃないとダメなんです。いま魚粉が値上がりして生産原価が上がるなか、国内市場は頭打ち。輸出はもっと伸ばしていかなければなりません」(中薗さん)

 販売価格の面でも、「輸出には希望がある」と中薗さんは語る。

東町漁協では、養殖タイ「鯛王」ブランドも展開。豊かな自然環境を背景にさまざまな天然魚も水揚げされる

「海外のスタンダードは『売り手市場』。生産コストに見合った価格をつけてもらえる。そのためには徹底したトレーサビリティが必要です。海外において、魚は日本のように『天然主義』ではないんですよ」

 さらに続ける。

「養殖って、みなさんがどう考えるかわからないけど、普段あなたは何を食べていますか? と聞きたいです。たとえばお肉。牛も豚も鶏も養殖ですよね。天然の、いのししを食べますか? コメは? 野菜は? これも養殖ですよね。そのへんに生えている草を食べますか? 日本人が食べているもののたぶん、90%は養殖ですよ」

 何を食べて、どう育ったか徹底的にデータも残された魚。

 海外では安心安全という評価が何より大切だ。

 そのためには、「組織としてしっかりした体制を整えないといけないんです。組織が管理しないと」と中薗さん。

「そのうえで、品質が安定すれば、お客さんに納得してもらえる。商談も決まる。そうすれば、生産者全員に利益は還元されるんです。大企業だったら、ブリがダメでもほかの魚を売ったり、株で儲けて補いましょうということもできるだろうけれど、わたしたちはそうはいかない」

 中薗さんはきっぱり語る。

薄井漁港そばにある、鰤王はじめ長島町の魚や特産物が楽しめる「長島大陸市場食堂」に飾られた鰤王の大漁旗

「うちらの敵は大手企業です。民間企業に負けないために、やっているんです。こんな小さな島の漁協が対等に事業展開をしていくにはそれしかありません」

 漁協内には「経営管理室」もある。生産者の経営について財務分析評価や、事業オペレーション、経営評価をまとめたセグメント評価管理マニュアルを作成し、指導する。

 中薗さんのいうとおり、体制は島にありながら「企業」そのものだ。

 その結果、東町漁協では平成19年には売上が過去最高の139億円に。輸出においても同年、過去最高の1033トンと過去最高記録。北米には金額ベースで、年間生産量のうち、約1.5割を出荷、実績は29ヵ国まで増えた。

 海外市場でもおいしさと安全性から高い評価を得て、世界のバイヤーから商談が来る。ブリの加工尾数は平成20年には100万尾を達成した。

 ブリ日本一、ブリ世界一のスーパー漁協として数々の目標を達成してきた東町漁協。しかし、未曾有の危機が訪れた。

※この続きはダイヤモンド・オンラインで6月10日(金)に公開予定です。

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