現在は50代で、食品メーカーの部長であるAさんは、40代になった頃から仕事量が爆発的に増え、もう少し自分で時間をコントロールできる方法はないものかと模索していました。時間管理の本や手帳術の本を数冊読んで真似してみましたが、どれもうまくいかなったと言います。ただ、どの本にも「仕事はかたまりではなく、細分化して考える」ということが書かれており、できるだけ分解して考えることを習慣にしたそうです。

 しかし、今度は違う壁にぶつかりました。細かく細分化してある程度テキパキとこなせるようになると、どれも仕事が中途半端になっていることに気がついたのです。何となく仕事をこなしているように感じていたけれど、やはりそれだけでは不十分で、じっくり時間を取ってやっていくべき仕事も確実にあることがわかりました。

 試行錯誤した結果、細かく分解してテキパキとこなせる仕事と、まとまった時間でじっくり、かたまりとして向き合う仕事に分けて考えるというシンプルなやり方を編み出しました。それは、自分の仕事を「シングルタスク」と「マルチタスク」の大きく二つに色分けすることです。

 シングルタスクは、他の作業を一切止め、突発的に生まれた想定外の仕事にも振り回されず、最優先でじっくりと取り組むタスクです。マルチタスクは、短時間に同時平行で回していくほうが効率的なタスクです。現実的に“同時に”行うわけではないので、イメージとしては、1時間を超えずに短時間でこなしていく、比較的単純作業のタスクです。

 例えばAさんの場合、企画提案の仕事はシングルタスク、承認作業や報告書作成はマルチタスクとして振り分けていました。そして、とにかくすべての仕事を単純に二つに色分けすることを徹底しました。手帳に書いたタスクは、文字通りピンクと黄色の蛍光ペンで囲んで視覚的にも色分けしていました。

 次に、その二種類のタスクを1日の時間割の中でどう割り振るかを考えていきます。シングルタスクに取り組むには、「まとまった時間」が必ず必要です。一方、マルチタスクには、ダラダラとしないために意図的に区切りをつけた「細切れ時間」を確保しなくてはいけません。

「仕事×時間」という関係の中で、「シングルタスク×まとまった時間」、「マルチタスク×細切れ時間」という、タスクの振り分け方を徹底するようにしたのです。

 時間の色分けについては、1時間単位で分ける「コマ割り」というやり方を実践しました。Aさんの場合、9時から20時まで働くことが多かったので、1時間のランチ休憩を除くと、合計10時間が平均的でした。1時間1コマなので、1日10コマがあり、そこにシングルタスクとマルチタスクの二つに色分けした仕事を振り分けていきました。

 シングルタスクには、できるだけ多くのコマ数を振り分け、マルチタスクには小さく刻んだコマ数を振り分けることがコツのようです。

 例えば、P社への提案書作成という仕事は「シングルタスク」で、そこに「まとまった時間」を振り分けるために、2コマ×2=4コマ(四時間)を確保します。

 部下への承認作業とか部門会議資料の作成といった仕事は「マルチタスク」なので、そこには「細切れ時間」を振り分けて、1コマ×3=3コマ(3時間)と、0.5コマ(30分)×6=3コマ(3時間)の合計6コマ(6時間)を振り分けるのが基本だそうです。

 それを1日10コマの時間割の中で振り分けていくことで、じっくり腰を据えて行う仕事と、同時並行でサクサクとこなしていく仕事の両方を行えるようになったそうです。

 1日の中で、シングルタスクとマルチタスクの両方の時間を最初から取ろうとすることがポイントです。放っておくと、1日はほとんどマルチタスクで埋められてしまいます。

40代は細切れ時間だけで成果は出ない!<br />忙しい人が「まとまった時間」を確保する秘訣

 時間の管理というと、どうしてもマルチタスク的な、同時平行で細かく分解した仕事を効率よく行うことが推奨されますが、それだけでは成果につながる重要な仕事を行うことには不十分です。

 いかにまとまった時間を取るかで多くの40代は苦労していますが、そのためにはAさんのように、仕事を大きく二つに分け、そこに時間を割り当て、二つともあらかじめスケジュールに組み込んでおくことが有効なのです。

【ポイント】「シングルタスク」と「マルチタスク」を色分けして最初から予定に組み込む

第8回に続く(6/10公開予定)