日本文化は、「一生付き合うもの」だから、もっと勉強したい

ムーギー 松尾さんは着物のことを勉強されて、着物のどんなところが魅力であると感じられて発信したいなと思ったのですか?

松尾 着物の魅力って、実は深くて種類もたくさんあるんです。なかにはワンピース感覚で着られるものもあったり。でも難しいイメージがありますよね。

ムーギー 素人的な印象ですと、着付けに2時間かかったり、脱ぐのにも2時間かかって、脱ぎ着するだけで日が暮れてしまいそうなイメージですけど。

松尾 そうそう(笑)。たしかに着るには30分ぐらいは最低でもかかりますけど、カジュアルな着物も存在するので、もっともっと皆さん着る機会があってもいいのかなと。

 あと、やっぱり着物の魅力って生地がどれも人の手がかかってることなんです。日本全国、いろんな土地でそれぞれつくられている生地があって、昔ながらの伝統や文化が感じられるものをもっと伝えていきたいなと。

ムーギー なるほど、日本の地場産業を守り育てることに寄与しているというのも着物文化を知ることに含まれているわけですね。

松尾 そう思います。

ムーギー いろんな着物のことを勉強されて、初心者の人にお勧めするならこれかなという着物はありますか?

松尾 そうですね、最近はデニム地の着物があったり、値段も比較的安価なポリエステルの着物があったりするので、いいかもしれないですね。個人的には「京紅型(きょうびんがた)」という技法で染められた小紋がワンピース感覚で着られるのにとても鮮やかで、着ると気分が上がって、いつか買えたらなぁと思います。

ムーギー・キム
1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、世界で最も長い歴史を誇る大手グローバル・コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、韓国・欧州・北欧・米国ほか、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より世界最大級の外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当したのち、香港に移住してプライベートエクイティファンドへの投資業務に転身。フランス、シンガポール、上海での留学後は、大手プライベート エクイティファンドで勤務。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。グローバル金融・教育・キャリアに関する多様な講演・執筆活動でも活躍し、東洋経済オンラインでの連載「グローバルエリートは見た!」は年間3000万PVを集める大人気コラムに。著書にベストセラー『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』(東洋経済新報社)がある。

ムーギー 本来、日本の着物はもっと身近なものだったはずなので、そういった着やすいものを教えてもらえるのはいいですよね。他にも、日本文化に親しむために勉強されてるものとかありますか?

松尾 和食に関してもそうですね。教室に通って学ばせてもらったり。

ムーギー それはまた、どうして?

松尾和食って日本語と同じようにずっとこれからも付き合っていくものですよね。家庭でも毎日食べるものですし。だから、きちんと和食の勉強を一度してみたかったんです。キムさんのように世界を飛び回ってる方はなかなか自分で作る機会はないかもしれないですけど(笑)。

ムーギー 私は大の和食好きで、世界中どこに行っても、シンガポール・チャンギ空港の寿司が値段は高いのに世界一不味くても、和食ないし、和食もどきばかりたべています。

松尾 私が最初にアナウンススクールに通ったのも、一生使う日本語だからもっとちゃんと勉強したいと思ったのがきっかけなんです。

ムーギー それはとても面白い発想ですよね。日本語が一生使うものだから、それと同じように和食も一生付き合うものとして学ぶ

松尾 そうなんです。和食って下ごしらえ一つでも、いろんな切り方だとか一つひとつの手数に意味があるんですよ。