一例を紹介するとM永さんとE川さんを一つのユニットとしました。東大卒ということもあって、新人当初は随分と期待されたM永さんでしたが、入社から10年経った今でも、状況の変化に臨機応変に対応することができないというか、自分の頭で考えて変化に対応することができないのです。上司から指示されたお客様への手土産の数が足りないだけで、パニックになってしまうレベルです。しかし、強みとしては地頭の良さからくる分析力や資料作成能力、指示されたことに応え切ろうとする一生懸命さがありました。

 一方のE川さんは、物怖じせずにどんどん顧客や案件を開拓していける度胸、フットワーク、コミュニケーション力という強みがありましたが、提出書類などの期限を守らないという決定的な弱みを持っていました。

 そこで、「ニコイチ」ではありませんが、それぞれの強みがそれぞれの弱みを補い合って、さらなるプラスを生み出すかもしれないということでユニットにしたのです。二人合わせて三人前の成果を出してもらったほうが会社のためにもなるし、それぞれの強みもさらに助長されるはずだと睨んだのでした。

 結果は大正解でした。それぞれが強みを生かして仕事ができるので、生産性や精度も高まり、チームの業績が飛躍しただけでなく、他のメンバーにもいい刺激になったためか、グループ全体の業績が押し上げられるという結果になったのです。

 部下の育成でも、自分一人でやれることは時間的にも限界がありますから、一石二鳥になるようなやり方を模索することが重要なのです。

 N口さんのケースはあくまで一例にすぎませんが、組織は人の集まりですから、他のメンバーとの化学変化を利用して、本人の強みをいかに発揮させるかを考えることが、人材育成の大原則なのです。

【ポイント】組織として部下の強みや組み合わせを活かせる体制をつくる

第19回に続く(7/6公開予定です)