一つ目の要素について言えば、12年第1四半期~14年第3四半期まで、金融機関の一般貸付の平均利率は8%から7.3%に下がり、さらに非金融上場企業の平均投資収益率は6.9%から6%に下がった。実体経済に新たに投資しても、投資収益は融資コストをカバーできず、民間固定資産投資の成長速度はしだいに下がっていった。

 しかし、実体経済の投資収益率が低迷を続けるのは、近年の民間投資の成長率の減速という大きな背景によるものというだけでは、15年以降、民間投資が18.1%から5.2%へと突然下落した事実を説明するには足りない。15年以降、実体投資収益率は低いところで安定しており、一方、金融機関の一般貸付利率は6.8%から5.7%と急速に下がっている。投資(借入)コストと収益の対比からみる限りは、民間投資の成長速度は回復して然るべきである。しかし意外なことに、15年上半期と今年に入ってから、民間投資は2度の大幅な下落を経験している。

 どうしてそうなったのか。鐘正生・張?両氏は「金融市場の『分流効果』と政府投資の『「押しのけ効果』が民間投資の急落に致命的な影響を与えた」と考えている。

原因2:金融市場の「分流効果」

 2015年以降、民間資金が実業を離れ、金融市場に向かう傾向が加速している。

 まず、不平等な競争が民間資金の実体経済進出の意欲をそいでいる。長期にわたって、中国の銀行の貸付先は国有企業や地方政府の融資プラットフォームへ大きく傾いており、民間への貸借にはひどく冷淡であるのが普通であった。このため、銀行の貸付利率は多くは政府の融資コストを反映しており、民間投資の多くは民間貸借利率を参考にしていた。

 14年第4四半期以降、中央銀行は6回にわたる金利引き下げを行い、銀行の一般貸付率を10.1%から5.7%へと大幅に引き下げる誘導を行ったが、同時期の民間貸借利率はずっと19%前後という高水準を保っていた。これは民間投資と政府投資のコストの不対等という状況をさらに激化させた。15年以降、民間投資の下落加速はこれと無関係なものではない。

 次に、株式と先物市場が一時高騰し、民間資金は顕著にこれらの金融市場に分流した。民間の融資が難しく、融資コストが高い背景のもと、15年上半期の強気相場、16年3月以降の株式市場の反発と先物市場高騰は、どれも民間の資金に明らかな分流作用を及ぼし、この2つの時期の民間投資はどちらも下落を加速させている。強気相場の始まりと共に、株式市場の1ヵ月の取引量は、14年10月の6600億株から昨年の株式暴落前には2兆400億株まで膨らみ、3倍以上もの増加となった。

 株式暴落後に株式市場から撤退した資金はいまだ実体にもどらず、銀行の財テクや基金などの助けを借りて債券市場に流入し、債券市場の「レバレッジ・ブル」を助長した。今年3月以降、信用違約事件の衝撃を受け、中国債券市場は調整期に入った。