いまや、毎日、首都圏近郊のどこかで落語会が開催されていることになる。落語ファンなどの聴き手が、落語に触れる間口は確実に広がった。

 それだけではない。落語の話し手である落語家たちの環境も大きく変わった。

 まず、落語家の数は約800人に激増。江戸時代以降、過去最多の人数である。

 そして、人気の落語家たちは、自身のホームページや、ツイッターなどのSNSを駆使して、自らの落語会の告知や仕事の募集に非常に精力的だ。800人の落語家がいるといっても、本業だけで生計を立てられるのは上位100人程度といわれ、落語という伝統芸能の世界でも競争原理が働くようになったからだ。

 今、玄人も唸る実力で人気急増中の柳家三三(やなぎや・さんざ)師匠(42歳)など、年間の高座件数は700を優に超えるほどの働き者である。

 過去を振り返れば、これまでも、落語ブームは幾度となく訪れ、そして去っていった。そのたびににわか落語ファンは出現するのだが、落語熱が持続せず、一過性のブームで終わってしまう状況が繰り返されてきた。

 直近の落語ブームは04~07年ごろに発生。落語家が主人公のドラマ「タイガー&ドラゴン」やNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」が放映されたことで、久しぶりにお茶の間に落語が広がった。

 さらに、春風亭小朝師匠ら実力派落語家が、流派を超えて「六人の会」を結成。東京・銀座周辺で「大銀座落語祭」と呼ばれる落語会を仕掛け、人々が一気に落語に関心を寄せた。

 多種多様なメディアがこぞって落語特集を企画し、いわゆる「平成の落語ブーム」が巻き起こった。

 しかし、これらのブームもまた長くは続かなかった。実際に、「私ら落語家にとってブームなんて感じませんでしたし、恩恵もなかったですねえ。あれはどこの世界の話なんですかねえ……」と高座で皮肉たっぷりのまくらを振る落語家もいた。

 あれから10年。現在、起きている落語ブームは、かつての一過性のブームとは様相が大きく異なる。

 過去最多の「落語家の数」と「高座件数」――。聴き手は、800人の中から好きなタイプの落語家だけを選んで、自由に落語会に出かけることができるなど、どっぷり落語にハマることができる。聴き手が落語に触れる間口が格段に広がったのだ。