9月14日に行なわれた民主党の党首選挙で、菅氏が小沢氏に予想外の大差をつけて勝利した。それによって、これからも菅政権が続くことが決まった。
しかし、菅政権は勝利の美酒に酔っている暇はない。現在のわが国経済には難問が山積しており、一刻も早くそうした問題に取り組み、解決策を見出していかないと、わが国経済の閉塞感を払拭することができないからだ。
今までの菅首相の政策運営を見ていると、いかにも動きが遅く、しかも政策の小出しをすることによって効果が減殺されることが多かった。金融市場では、そうした状況を揶揄して“待ちの菅さん”、あるいは“待ち菅”と表現する人もいるようだ。
その背景には、民主党内の権力闘争があったと見られる。今回、党首選で勝利した以上、その懸念はなくなったはずだ。実務家や経済専門家の見方を十分に反映して、実効性のある政策運営を迅速に打たなければならない。
わが国経済を取り巻く経済環境は、日々厳しさを増しており、待ったなしの状況だ。海外投資家の中には、「ここで経済を立て直すことができないと、日本はジリ貧の坂を転げ落ちることになる」との見方さえある。
菅首相は、そうした声に真摯に耳を傾けるべきだ。そうした認識が出発点にないと、今の日本社会を明るくすることはできないだろう。
実務家が少ない政権が抱える不安
短期的には理屈と逆の方向に動くのもよい?
市場関係者や経済専門家の間から、「菅内閣の中に実務を本当にわかっている実務家がほとんどいない」という指摘を耳にする。確かに、閣僚の顔ぶれを見ると、企業経営や国政レベルの実務を経験した人の数は多くない。
現在のように、社会の様々な要因が複雑に絡み合っている状況では、単純に理屈通りに物事が運ぶものではない。ときには、短期的に理屈と反対の方向に向かって動かなくてはいけないことも考えられる。