6月24日、英国では国民投票によって、EU離脱が決まった。主として経済面での理由がいわれているが、筆者は、実は英国の主たる宗教が「英国国教会(Church of England)」であることが主因の一つであると考えている。
政治的意思で
統合へ向かったEUの原点
52年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立され、EU統合が具体的にスタートした。欧州は第1次・第2次と2つの世界大戦で、国土が焦土と化し、多数の人命も失った。そのため、まずは二度と戦争を起こさないために、経済的というよりも、政治的意思として統合へ向かった。この点では、ドイツ・フランスに比べて、英国は地上戦がなかっただけ戦争被害が少なかったことも、影響している可能性がある。
1999年には単一通貨ユーロ(Euro)が発足した。通貨の統合も一つの国に向かう大事な道筋で、戻ることはできない。欧州統合では重要なステップである。以前、ギリシャがユーロを離脱するといういい加減な話もあった。よく調べてほしいが、ユーロ離脱の項目はEUの条約にない。つまり、実際にユーロを離脱するということは、そもそもEUを離脱することなのである。これほどのことをギリシャがするはずはない。
ちなみに長年、欧州経済、特に欧州統合を研究していると、“国”の特徴が見えてくる。現在のEU28ヵ国で、通貨統合まで進んだユーロ参加国は19ヵ国である。欧州は4つの国家グループに分かれる。これは、単一通貨を目指して収斂を始めていた、92~93年に発生した欧州通貨危機等の対応等ではっきりした。
まずゲルマン系の国々(ドイツ・オランダ等)の通貨は常に上昇する傾向があり、ラテン系の国々(フランス・イタリア・スペイン等)の通貨は常に下落する傾向があった。これは経済の強さとインフレ管理の厳格さによるものである。
それに加え、北欧系の国々(イギリス・デンマーク等)があった。北欧の国々を見ると、そもそもノルウェーはEUにも入っていないし、英国、デンマーク、スウェーデンは単一通貨ユーロに参加していない。北欧の国々は、そもそも欧州の中でも独立性が強い。
さらに、2004年に東欧系の国々(ポーランド・チェコ・ハンガリー・エストニア・ラトビア・リトアニア・スロバキア・スロベニア等)がEUに参加したが、まだ発展途上国で、後に先進国である英国などに移民し、今回のEU離脱の一因になった。このように、北欧である英国は独立性が強く、過去を見ても19世紀後半には「栄光ある孤立」政策を進めていた。