石油元売りの新日本石油、出光興産が10月1日から週ごとにガソリンなど石油製品の卸価格を決定する新体系に移行したのに続き、ジャパンエナジーも11月から同様の方式を採用することを表明した。この新体系が安売りを行なってきたガソリンスタンドに大きな打撃を与える可能性があることは、あまり知られていない。

 従来、石油元売りは石油製品の卸価格を月に1回、または2回改定して、系列のスタンドに供給してきた。主に原油コストと為替変動に連動させて卸価格を決定していた。

 しかし、今年に入ってからの原油急騰局面では、レギュラーガソリン価格が毎月の改定ごとに1リットル当たり10円以上上昇したことで、月末にはユーザーが行列をなしてガソリンを買いだめする現象が頻発した。

  逆に月初には買い控えが起こり、スタンドの経営も大きな混乱に陥った。そのため、週決めの卸価格体系への移行は必須だったといえる。

 新体系の狙いは、じつはそれだけではない。

  日本では一部の石油元売りが設備稼働率を上げるため、自社の系列スタンドでさばき切れなかったガソリンを商社など経由で市場に放出している。

 「業転玉(ぎょく)」と呼ばれるこのガソリンは、系列スタンドよりも最大で10円程度も安く流通しており、独立系のスタンドが積極的に購入して、価格破壊を仕掛けていた。

 新体系ではこの業転玉を含めた市況情報を参考に卸価格を決めるとしており、「両者の価格差は縮まっていくだろう」(大手石油元売り幹部)との見方が強い。それだけに業転玉を当てにしている独立系安売り店が、窮地に立たされる可能性がある。

 今のところ、新体系を導入したばかりで、両者の価格差は「目に見えては縮まっていない」(ある市況調査会社)というが、早晩、格安店に淘汰の波が訪れるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)