職場、家庭などのストレスに悩まされている多くの現代ビジネスマンたち。ストレス過多となり、うつ病などの精神疾患に陥る人も少なくない。そうした状況に対して、原宿カウンセリングセンター所長で臨床心理士・カウンセラーの信田さよ子氏は、40年にわたり15~80歳の臨床現場に立ち会った経験から、「らくになること」「ふりまわされない」ことこそ、ストレスから解放される方法だと説いてきた。では、現代のビジネスマンたちは具体的にどうすれば周りにふりまわされずに生きることができるのだろうか。『ふりまわされない~会社、仕事、人間関係がらくになる7つの物語』(小社刊)を上梓したばかりの信田氏に、その処方箋を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

マニュアル世代だからこそ覚えてほしい
うつにならないコツ

――先日、「『心の病を抱える社員が増えた』という企業が4割超」(「読売新聞」8月31日付)という報道もあったように、職場における社員の心の問題が深刻になっています。なぜこうした状況が生まれてしまったのでしょうか。

信田さよ子(のぶた・さよこ)
臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。 お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年、原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、DV、ひきこもり、子どもの虐待などに悩む人やその家族のカウンセリングを行う。クライエントは15~80歳まで、カウンセリング歴は40年を超える。著書に、『母が重くてたまらない』(春秋社)、『共依存・からめとる愛』(朝日新聞出版)、『父親再生』(NTT出版)ほか多数。

 私自身、「昔と変わった」という印象はないんですよ。「心の病」に悩む方は以前からいましたから。ただ、いわゆる“マニュアル世代”が30代中盤~40代前半になり、「マニュアルどおりに進まないと自分が悪い」と自分を責めたり、落ち込んだりする人が増えつつあるように感じます。

 彼らは、大学受験などの影響で二者択一的思考があり、「成功するマニュアルを知りたい」「マニュアルどおりにできないと自分が悪い」という短絡的な回路に陥ってしまいがちです。安易な方法論を求めすぎではないでしょうか。

 大事なことは“正解”を求めることではなく、「自分がらくになれるかどうか」です。外に基準を置き、その“正解”に沿って行動するという発想ではなくて、基準を自分のなかに置くことが重要でしょう。「これが正しい」と思った方法どおりにやっても、うまくいく保証はありません。「安易なハウ・ツー路線」を捨てるべきです。

また、最近では企業の昇進試験などの内容が非常に高度化しています。筆記はもちろんのこと面接も高度になり、アメリカ式のビジネスパーソンモデルが40歳前後から徹底されています。いまの50歳以上の世代とはまったく違い、人事モデルがドラスティックに変わる境目にある、すごく難しい世代だといえるでしょう。