その後、90年代を通して、企業にとって邪魔になるような規制はすべて撤廃するという新自由主義的な考え方を進めた結果、一握りの富裕層が果実を独占するという状況が生まれました。日本でも同じことが起こりました。この流れは、2000年代に入ってからも続いていますが、企業にとって都合のよいルールなき資本主義というのは、健全な社会の発展を阻害するものだと思うのです。

――近年は、世界的にも格差や貧困の問題がクローズアップされるようになりました。とりわけ、志位さんが注目している国や地域はありますか。

 そうですね。私は、ラテンアメリカの動きに注目しています。かつて、この地域は「アメリカの裏庭」などと呼ばれていましたが、近年はまったく異なっています。今では、80年代に米国から押し付けられた新自由主義的な考え方を放棄し、格差や貧困の問題を解決するために自らの意思で民主革命を起こしていることです。それも、ラテンアメリカを“面で覆う”ように進んでいます。

 一方では、例えば今年の米国大統領選挙で民主党の有力候補者であるバーニー・サンダースさんは、自らを「民主社会主義者」と言うように、格差や貧困の問題を訴え続けてきました。社会主義者であっても、サンダースさんは米国でかなりの支持を得ていますし、ヒラリー・クリントンさんを追い落とすほどの勢いがあります。さらに英国では、昨年、同じく民主社会主義者を標榜するジェレミー・コービンさんが労働党の党首になっています。彼はハードレフト(強硬左派)に属す政治家ですから、格差や貧困の是正に乗り出しています。

 奇しくも、世界で同時多発的に、それも資本主義の総本山である米国や英国で、そうした動きが出ているのです。この新しい流れは、偶然ではありません。

旧ソ連とはまったく異なる
日本共産党の自主独立路線

――しかしながら、日本の社会には、今も“共産党アレルギー”のようなものがあります。日本共産党の歴史を調べると、1955年に武装闘争路線を放棄してからは、「選挙による議席の獲得を通じて社会を改革する」というソフト路線に転じています。その一方で、約40年間トップの座にあった宮本顕治さんが執筆した『日本革命の展望』(68年)には、マルクス=レーニン主義に立脚する暴力革命を論じた“敵の出方論”が出てきます。

若手の党員向けの勉強会では、ソフト路線に移行してからの日本共産党の理論的支柱だった不破哲三・前中央委員会議長や、現在の党首である志位和夫委員長も講師も務める(左上)。これとは別に、特別党学校という研修会も開催する 写真提供:日本共産党中央委員会

 いや。かつて、日本共産党が“敵の出方論”と言っていた時代の考え方は、武力闘争に訴えて暴力革命を起こすということではない。むしろ、反対です。

 要するに、国民の多数の支持を経て社会の改革を進めるという方針であっても、アメリカ帝国主義とそれに従属する日本独占資本などの敵がクーデターを仕掛けたり、不法な手段で襲ってきたりした場合には私たちが進める平和的な改革路線が阻まれる可能性があり得る。そうした事態に備えて準備をしておくという意味なのです。武装蜂起して革命を起こしたいのではありません。