十和田から集団就職で東京へ

 店主の佐藤定美は昭和26年生まれ。青森県十和田市の中学校を出て、集団就職で東京にやってきた。

「詰め襟を着て、上野駅に着いたんだ。『あゝ、上野駅』の最後の世代が私さ」

 同名曲は1964年東京オリンピックの年にヒットした歌謡曲である。歌手は井沢八郎。

 上京した後、町の精肉店に勤め、その後はスーパーの精肉部に移った。佐藤は言う。

「子どもが3人いて、もう少し、もうかる商売はないかなとスーパーをやめて飲食店に入った」

 その飲食店が、はなむら。前の経営者は料理好きの女性で、佐藤は彼女から調理を教わった。そして、引退した彼女の跡を継いで独立したのが32歳の時。

「肉屋で働いていたから牛でも豚でもまるまる1頭をバラすことができる。うちで出している豚肉も塊を買ってきて、自分で部位を選んでスライスしている。だから、うまいんだ。スライスした肉を買ってきたのとでは味が違う。肉ウインナーで出す豚肉は肩ロースだ。脂身が少なくてやわらかいから、焼いて食べるにはいい。とんカツには普通のロースを使う。カツは脂身があったほうがおいしいね。赤ウインナーは業務用だよ。普通のウインナーより赤が好きなお客さんが多いから、赤にしてる」

 客の大半は防衛庁、機動隊(防衛庁の隣にある)、大日本印刷、工事現場の人々。みんな体を動かして働く人たちである。佐藤は客層に合わせてご飯(あきたこまち)の量を多くしている。カレーライス(640円)やチャーハン(520円)もびっくりするほどの盛りだ。