舛添前知事の辞職に伴う東京都知事選挙が7月14日に告示され、31日の投開票まで目が離せない。都知事選挙については、これまで政治的な側面ばかりが注目され、「政策に大差ない」といった安易な報道が目立つが、各候補者の公約を比較してみると、その主張内容や力点の置き方にはかなりの温度差がある。本稿では主要3候補の政策面での公約を比較検証してみることとしたい。

政策とは異なる論点が注目された3候補
都知事は都政の政策本位で選ばれるべき

 自民党の東京都連は、先月早々と出馬を表明した自民党衆議院議員だった小池百合子・元防衛相・環境相ではなく、告示の数日前になって元岩手県知事・総務相の増田寛也氏を推薦すると決定し、自民党は分裂選挙となった。さらに、野党は二転三転した上、告示の前日になってジャーナリストの鳥越俊太郎氏を推薦することとなった。

 自民党都連は、いわば身内である小池氏を推薦しない理由が必ずしも明らかでないまま他の候補者を模索し、増田氏に決まった後は、「増田氏以外の候補者を支援した場合は親族を含めて除名を含めた厳しい処分をする」との通達まで出すなど、不自然さが目立つ。

 これについては、辞職した猪瀬直樹・元知事らが自民党都連の一部幹部や森喜朗・元首相などによる都政支配をネット上で激しく告発したことなどとも相まって、「都政の透明化を主張する小池」対「従来型の都議会との調和を重視する増田」の構図が明確になった感がある。

 前者は、都政の意思決定プロセスを明確にし、五輪をはじめとする利権構造にも踏み込んで予算策定と運営を適正化しようというものであり、後者は、知事と議会の間にすき間風を吹かせないように気を遣いながら円満に物事を進めようというものだ。

 一方、民進党ほか野党4党の統一候補となった鳥越氏は、出馬会見で出馬のきっかけについて「参議院選挙の結果、改憲勢力が3分の2を取ったことへの危機感」と、都政とはあまり関係ないとも思われる理由を挙げる異例の展開となった。

 すなわち、今回の都知事選は、まず都政のガバナンス改革や、改憲の是非といった、個別政策とは異なる論点がハイライトを浴びてきた。しかし、都知事は本来、都政に関する政策本位で選ばれるべきものであろう。

 その点に関連して付け加えると、鳥越氏は、小池氏が街頭演説で自身の健康問題に言及したことについてテレビ番組で不快感を表明した。鳥越氏の健康問題や各種週刊誌報道などは次の4年間を考える時、都知事としての資質を判断すべき要素の一つではあろうが、これらは都知事選の「政策上の争点」ではない。なお、小池氏は、後述するように3候補者の中で最もダイバーシティを重視する政策を打ち出しているのであり、がん患者一般への偏見があるとは思われない。