もちろん、別の企業に勤めていた転職者だけではなく、既卒者も不利にならないような採用が行われることが望ましい。

 ただし、求職者が企業から見て真に魅力的であれば、既卒でも転職による中途入社であっても、企業は採用したいと思うはずだ。「画一的な就職活動をするのではない、個性的な学生(や元学生)こそが魅力的な人材だ」という考えは、たまたまそういう人材もいるという話であって、総論としては企業から見てファンタジーに近い。少なくとも、一般的に「よくある話」ではないだろう。もちろん、原則論として、人材採用の門戸を広く開放することは、社会的な存在である企業として望ましいことなので、反対はしない。

通年の採用活動がいいのなら
青田買いも正当化される

 採用活動は通年で行うのがいいし、既卒者・転職者も有能なら採用して使うべきだというのは、企業の手間や人事制度などのコストの問題を棚上げすると、理屈が通っているように思う。

 そうだとすれば、就職活動時期の学齢を待たずに有望な学生を採用する、いわゆる「青田買い」も正当化されていいように思う。

 率直に言って、人材が仕事にあって有能であるか否かを分かつ最大の要素は、大学生時代の努力の質と量ではなく、その人物の才能・素質だ。身も蓋もない話だが、事実なのだから仕方がない。企業から見て、良い素質のある学生を早く確保することは、合理的な行動だ。

 ただ、採用活動に熱心なことで知られるある企業の経営者から聞いた話だが、「青田買い」による人材評価は「精度が落ちる」面があるのだそうだ。とはいえ、評価に不確実な面があっても、それを補うに足るだけ高い素質を持っていると評価した学生を採用することは、企業にとって悪いことではない。

 また、学生にとっても、早々に就職が決まっていれば、就職活動に無駄なエネルギーを注がずに済み、学業に集中できる場合もあるだろう。この場合も、内定を取った学生に見捨てられるとすれば、大学側の教育内容に魅力が乏しいことが問題である。

 ただし、学生が内定を得てから、実際に就職するまでの期間が長くなるので、この場合の雇われる側・雇う側双方の事情の変化をどう処理するかを、内定時に合意しておく必要があるだろう。たとえば、学生がどうしても大学院に進んで研究をしたいと思った場合にどうするか、あるいは、企業の事業環境が急激に悪化した場合にどうするか、という点に関する「契約」の問題だ。社会経験が乏しい学生には、時にハードルが高い場合もあろうが、双方が納得できる契約を結べる場合に、第三者が邪魔をする正当な理由はない。