サンエー・東京スタイル経営統合<br />立ちはだかる企業文化の壁「ありえない組み合わせ」は成功するか
(サンエーのフリーズショップの店舗)

「本当に驚いた。いちばんありえないと思っていた組み合わせだ」

 大手アパレルメーカー幹部が言う「ありえない組み合わせ」とは、売上高業界7位のサンエー・インターナショナル(以下、サンエー)と同11位の東京スタイルの経営統合(2011年6月に共同持ち株会社設立予定)を指している。

 なぜ、最もありえない組み合わせなのか。「両社はまったくカルチャーが違う。一緒になってうまくいくとは思えない」(業界関係者)。

 サンエーは、ブランドマネジメントやプロモーションに定評があり、販路も百貨店、駅ビル、ショッピングセンターと幅広い。自社工場を持たず、OEM(相手先ブランドによる生産)やODM(相手先ブランドによる設計・生産)を活用する「販売が得意な会社」で、社員は「商人的」だ。

 一方の東京スタイルは、販路は百貨店が中心で、自社工場を持ち、一から商品企画を手がける「ものづくりが得意な会社」で、社員は「職人的」といわれている。

 ここまで企業文化が対照的な両社が経営統合を決断した背景には、海外のファストファッションとの競争激化や、長引く不況で低迷する百貨店での衣料品販売の不振がある。直近の決算では、サンエーは当期赤字に、東京スタイルは百貨店への依存度が高いため、売上高が前年比で17%も減少した。このままでは生き残れない、という危機感が両社の背中を押したのだ。

 経営統合により売上高では業界3位に躍り出る。互いの得意分野がうまく噛み合えば、競争力は高まるだろう。それには、「水と油」の企業文化を融合させるトップのリーダーシップと、社員の意識改革が不可欠だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)

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