さて、ちょっと余談にはなりますが、もうひとつ大きな発見があります。
農家さんの何がすごいって、とにかく何でもできる!ということです。できることは畑仕事に限りません。農業のプロはえてして「生活のプロ」でもあるのです。
農機具、トラクターが壊れれば自分で修理する、水漏れがあれば配管も直せる、カンタンな小屋なら1人でつくってしまうと、自分たちの手だけでできる範囲が本当に広い。
何があってもイライラおたおたせず、自分の生活は自分の手で立てていく姿は、カスタマーサポートに電話したり、行政に電話したりと、外に助けを求める生き方よりも、何倍もカッコよく見えます。
ある日、わたしがスパイダーモアという自走式草刈り機を使っていたら、路肩が崩れて崖から転落し、崖下でもがくばかりでにっちもさっちもいかなくなってしまったことがありました。
農機具は車じゃないから、JAFが呼べないなあ、と困り果て、集落で仲のいい農家さんに「た、たすけてください!」と電話をしたら、大きなトラクターにバックホー(油圧ショベル)のアタッチメントを付けてすぐ駆けつけてくれたのです。
太いロープをおろして南京結びで縛り、重い重い機械をぐわーっと持ち上げてくれて、わたしも機械も無傷で無事救出。ありがとうございます、ありがとうございますとお礼三昧のわたしに、
「農家は助け合い、気にすんな」
とニヤリ、以上。
惚れずにはおられません。食べ物がつくれて、住まいやその周辺のメンテナンスが自分でできて、まわりと助け合い補い合って暮らしていければ、本当にお金を使わずに生きていくことができます。他者に依拠しないでも生きていける自信を持つことで、心にゆとりも生まれます。
たくさんお金を使ってお金をぐるぐる回すことが経済成長につながる、それが豊かさの指標でもある世の中ですが、農的生活にはその真逆の豊かさがあるようです。
(第22回に続く)