『週刊ダイヤモンド』4月1日号の第一特集は「美術とおカネ アートの裏側全部見せます。」。およそ80ページにも及ぶ大特集では、お金の流れから作家の生活、歴史から鑑賞術まで全てを網羅した。ここでは、アートが好きな経営者や学者、画家や写真家など特集で取材した“美の達人”たちのインタビューをお届けしたい。今回は、松本大・マネックス証券会長だ。(週刊ダイヤモンド委嘱記者 森川幹人)

──マネックス証券では社内にアートを展示しているそうですが、もともとアートが好きだったのですか?

松本大氏が「アートってうんちのようなもの」と例える理由まつもと・おおき/1987年東京大学法学部卒業後、米ソロモン・ブラザーズを経て、米ゴールドマン・サックスに勤務。99年マネックス証券を設立。2015年より現職 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 学生時代は金が掛からない楽しみとして、よく美術館へ行ってました。高校時代は写真部の部長をしていて、そこで親友となる写真芸術家の松江泰治さんに出会ったんです。1987年に彼が銀座で個展をやったとき、売れてなかったので、作品を購入したんです。彼の影響もあり、現代アートを見るようになりました。

──マネックス証券のART IN THE OFFICEは、他社も取り入れるなど、反響が大きいようですね。

 これは毎年コンペで選んだアーティストに、2、3週間会社に滞在して会議室で作品を作ってもらい、それをプレスルームに展示するプロジェクトです。場を提供するのが証券会社の仕事なので、オフィスを移転したとき、作家を呼ぶことにしました。アーティストと社員が出会う場をつくれたら面白いと思ったんです。

 その際、社員向けにワークショップをやってもらっていて、制作中も社員と交流していますね。選ばれるアーティストのタイプも毎年全く変わるので、年によって会議室に通う社員もけっこう変わるんです。相性の良しあしが見えてきて、アートって面白いなと思いました。最初は「また社長が何か始めたよ」という感じだったんですが、今は完全に市民権を得ましたね(笑)。