東日本大震災直後、中国人観光客が銀座の街から姿を消した。横付けされる観光バスから街に繰り出し、両手一杯にショッピングバッグを抱えた中国人観光客は福島第一原発の事故とともに、潮が引くように見られなくなった。

 2011年3月の訪日中国人は6万2500人で前年同月比49.3%減、4月は7万6200人で前年同期比49.5%減に。中国人観光客に向けて店作りを行ってきたところも少なくないだけに、関連業界はショックを隠せない。

 銀座4丁目の小売業者は、「準備万端整えて、さあこれで受け入れ万全!と思ったところで原発事故。すっかり出端をくじかれました」と語る。都内のホテル関係者は「日本法人や披露宴利用は需要を回復させているが、外国人観光客はまだ戻ってこない」と話す。いつ中国人観光客が戻るかまったく見通しの立たないなかで、担当者らは頭を抱えている。

温家宝首相の福島訪問で動き
西日本への集客には課題も

 そこに日中韓三ヵ国首脳会議で温家宝首相が来日した。放射能の汚染源として中国人が極度に恐れる福島県を訪れ、さらに福島県産のサクランボ、キュウリ、ミニトマトまでも食べるパフォーマンスを披露した。政策面では観光面の交流拡大を通して日本の復興支援策を打ち出した。

「温家宝首相が被災地を訪れたというメッセージ性は大きい」と某自治体幹部は期待を寄せる。その温家宝効果は日中の政府・旅行業界レベルに新しい動きをもたらしたかのようだ。

 5月31日、国家旅游局長を代表とする訪日団が来日した。これは観光庁が中国の各都市の旅游局幹部や旅行代理店など総勢100名を招聘したもので、温家宝首相が表明した「中日間の観光交流を拡大したい」との「安全宣言」を裏付けるものになる。訪日団は東京、横浜、大阪を訪れた。