米カリスマ経営者が語る「デジタル変革、米中問題、TIME誌買収」

創業から20年で年商132億ドル(約1兆4600億円)へと急成長したセールスフォース・ドットコム。創業者のマーク・ベニオフ会長兼共同最高経営責任者(CEO)は、クラウドコンピューティング・サービスの先駆者として知られる米IT業界のカリスマ経営者だ。昨年秋にはリン夫人と共同で米老舗メディア『TIME(タイム)誌』を買収するなど、本業以外でも話題を振りまいている。来日したベニオフ氏に、セールスフォースの強み、デジタル変革の要諦、タイム誌買収の真意から米中関係の解釈まで幅広く話を聞いた。(執筆/ビジネスメディア編集局局長 麻生祐司、撮影/加藤昌人)

米カリスマ経営者が語る「デジタル変革、米中問題、TIME誌買収」Marc Benioff(マーク・ベニオフ)
米セールスフォース・ドットコムの創業者で、現在は会長兼共同CEO。15歳でソフトウェア会社を立ち上げ、その後アップルやオラクルなどを経て、1999年にセールスフォース・ドットコムを創設。SFA・CRMを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの分野を切り開いた。社会貢献活動に積極的なことでも知られ、教育・医療・貧困対策などに多額の寄付を行っている Photo by Masato Kato

――セールスフォースといえば、クラウド技術を駆使して営業支援(SFA)・顧客管理(CRM)向けのソフトウェアをインターネット経由で提供する「SaaS(Software as a Service)」の先駆者ですが、過去20年間の急成長の理由について、どのように自己分析をしていますか。

  「Shosin(初心)」、すなわちビギナーズマインドを大切にしてきたことが理由だと考えています。変化が多い時代だからこそ、初心は非常に重要なフレーズです。

 初心者の気持ちならば、さまざまな可能性を検討することができますが、専門家になってしまうと、考え方はどうしても狭まる。だから、われわれは初心をなんとかして「開発」しなければなりません。

 もちろん、これは難題です。なぜなら、経験したさまざまな問題や障害がトラウマになるからです。意識の中にあるそうした呪縛から逃れることは本当に難しい。しかし、われわれに選択肢はなく、初心に戻ることができるよう、戦わなければならないのです。

 初心に立ち返れば、新たなエネルギーを得ることが可能です。これこそが大事な理念であり、われわれが未来を創造できる理由です。

――今年3月の2019年1月期決算発表時に「今後4年で売り上げ規模を2倍にする」と表明しました。2023年1月期には260億~280億ドル(約2兆8000億~3兆円)の売り上げを目指すことになります。

 それはグローバルの数字です。日本市場はもっと早く成長しますよ。