マンション投資の黄金時代は終焉か、「渋々の価格上昇」で薄れる妙味急落がなければ割安な価格で物件を仕入れるチャンスも乏しい Photo: AP/AFLO

 東京、とりわけ都心部のマンション価格の高騰が止まらない。昨年2月後半に起こった新型コロナショックの株価下落に続いて、都心のマンション価格の下落も起こるかと当初は思えた。しかし財政・金融政策を総動員した新型コロナ不況対策で株価が昨年4月から反騰した。それに伴いマンション価格も軟化したのは昨年4月だけで、現在に至るまで上昇基調をたどっている。

 2012年を直近の底値に2013年以降、東京のマンション価格は景気回復に連れて長く上昇基調が続いた。そのため2018~19年頃から賃料との対比で見たマンション価格の割高感が高まっていた。

 筆者の知る限り、程度の違いこそあれ、不動産アナリストや評論家はみなこの時期にマンションの高値警戒感、反落の可能性を語っていた。そうした支配的な予想を覆して不況下での価格上昇が続いているのだ。かく言う筆者も昨年3月の本コラムでマンション価格の下落を予想して外した。「コロナ不況でマンション価格崩落が始まる、リーマン級ならどこまで下がるか」(2020年3月31日掲載)。

 新型コロナ不況下でのマンション価格の高騰という今の状況は、果たしてバブルなのだろうか。前半と後半に分けて、この問題を3つの観点から読み解いてみよう。第1は主に投資家目線、第2が購入居住者目線、第3が不動産価格の国際的な同調性だ。

 今回の前半部が第1の主に投資家目線からの分析で、その結論を言うと、新型コロナ不況下でのマンション価格の上昇は、国内的要因としては日本株価の反騰と失業率の抑制、そして中古マンション在庫率の低下に支えられている。少なくとも現在のマンション価格の水準にバブル的な要素は限定的だ。

 仮に今のテンポでさらに数年間も上がり続ければ、「バブル的」と言うべき水準にもなろうが、いずれ上昇率は賃料や所得の伸びに見合ったテンポに鈍化するだろう。そうであれば、1990年代のバブル崩壊のような暴落はもとより、2008年のリーマンショック後のような大きな下落局面も起こりそうにない。

 もっとも投資家目線で言うと、急落がないということは割安な価格でマンション物件を仕入れるチャンスも乏しいことになる。むしろ過去20年余りは、借金による金融レバレッジで大したリスクもなしに、簡単に10%を超える自己資金投資リターンを実現できたマンション投資の黄金時代だったのだ。残念ながら、そうした時代は終焉した可能性が高い。そう考える理由を説明しよう。