「Windows 365」Photo:Microsoftマイクロソフトの法人向けWebベースOS「Windows 365」 Photo:Microsoft

8月から「Windows 365」という名前でWebベースのOSを法人向けに提供しはじめたマイクロソフト。一方、グーグルもChrome OSによってWebベースOSの普及に力を入れており、その専用機であるChromebookは教育市場で人気となっている。アップルは今のところこの状況を静観しているが、そこにはどのような思惑があるのか。今回はなぜWebベースOSが増えているのか、そしてアップルがWebベースOSを提供する可能性について考えてみる。(テクノロジーライター 大谷和利)

Windows 365に見るマイクロソフトの戦略

 過去何年かにわたって、マイクロソフトはIT業界の大手4社(いわゆるGAFA)に名を連ねることができず、かつて帝国とまでいわれたビジネス基盤を失っているかに見えた。実際のところ、Windows関連製品はもはや同社の主力ビジネスではなく、アマゾンの「AWS」(Amazon Web Service)に次ぐ業界第2位のパブリッククラウドサービスである「Microsoft Azure」(アジュール)が稼ぎ頭となっている。しかも、Azureクラウドサービスは成長が著しく、ここ数年でAWSを抜く可能性を感じるほどの勢いがある。両者は、米国防総省やNSA(米国家安全保障局)の大型クラウド受注案件をめぐっても激しい火花を散らしている。

 Windowsはこれまでパーソナルコンピューター向けOSとして独占的なシェアを確保しながら、その代償としてウイルスやマルウエアの標的となっていた。ユーザーはセキュリティーアップデートの嵐に煩わされ、逆にマイクロソフトはOSの違法コピー問題やレガシーハードウエアのサポートなどに悩まされてきた。これらのしわ寄せは、社員のコンピューター環境を管理する立場にある企業のIT部門に集中し、安易なパスワード設定などに起因するハッキングやノートPCの置き忘れによる情報漏洩なども管理者にとって大きな問題だった。