外国人労働者受け入れ拡大より、日本人の待遇改善を優先すべき理由写真はイメージです Photo:PIXTA

政府は、労働力不足を緩和するため、外国人労働者の受け入れを拡大する方針のようだ。労働力不足なら、外国人労働者の受け入れ拡大より、日本人労働者の待遇改善を優先すべきではないだろうか。(経済評論家 塚崎公義)

政府は外国人労働者の受け入れを
拡大する方針

 政府は、労働力不足を緩和するため、外国人労働者の受け入れを拡大する方針のようだ(ロイター「出入国管理庁、特定技能見直しへ 外国人労働者に永住の道広がる」)。具体的には、「特定技能」の在留資格を持つ外国人労働者に対して永住や家族の帯同を認めることで彼らの来日を促す、ということのようである。

 しかし、これは非常に問題が多いと筆者は考えている。外国人労働者の受け入れを拡大する前に、日本人労働者の待遇を改善すべきだ。

経営者にとっての「労働力不足」は
労働者目線では「賃上げ不足」

「労働力不足」という言葉は、経営者目線の言葉である。「現在の時給で労働者を募集しても必要な人数が応募してこない」ということであろうから、これを労働者目線で見ると「賃上げ不足」ということになる。

 労働力の需要と供給が一致するような賃金水準(均衡賃金と呼ぶ)よりも低い時給で労働者を募集しているから、応募がないのだ。それならば、外国人労働者の受け入れを増やす前に、募集条件を改善して均衡賃金にまで引き上げれば良いだけの話である。

 労働力の需給に敏感に反応して賃金が動くのは非正規労働者であろうから、アルバイトやパートの時給を引き上げれば良い、ということになる。

 日本には、「ワーキング・プア」と呼ばれる人々が大勢いる。就職氷河期に就職活動をした人が多いようだ。そうした不運な人々の時給が上がることは、公平性の観点からも、同一労働同一賃金の観点からも望ましいといえるはずだ。

 彼らの時給が上がれば、企業はコストの上昇を売値に転嫁する可能性があり、その結果われわれが支払う料金が値上がりすることもあり得るが、このような経緯であれば、筆者は喜んで受け入れるつもりである。