日米テンバガー投資術#6Photo:Hildegarde/gettyimages

期待先行で株価が急騰する銘柄は少なくないが、長期的な動向を決めるのは企業の業績だ。高成長が続くなら暴落時こそ買いの好機だが、難しいのは割高感の見極めである。そこで特集『今こそチャンス!日米テンバガー投資術』(全16回)の#6では、ゴールドマン・サックス証券出身者が開発した新ツールを用い、「織り込み成長率」の観点から、昨今の代表的な株高銘柄の割高度合いを検証した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

PERやPBRだけじゃない
株価を業績に「翻訳」の新ツール

 国内外の株式相場が年明け以降、軟調な展開となる中、市場でもてはやされてきた人気銘柄の一角が大きく売られた。今後も成長が期待できる銘柄なら、仕込み時が到来したともいえるが、その際、判断の鍵を握るのは株価が割高でないかどうかだ。

 市場関係者の間でも広く用いられているバリュエーション(投資尺度)の指標としては、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)があるが、例えば同じPER30倍の企業を比べても、成長率の度合いは全く異なることも珍しくなく、割高度の判断は常に難しい。

 そこで、本稿では株価の割高度を見極める上で助けとなる新たなツールを紹介したい。ゴールドマン・サックス証券(GS)出身の中村岳嗣氏が立ち上げたフィンテックスタートアップ、スタイリィの「propro(プロプロ)」という投資判断支援ツールだ。

 何しろ、株価は企業の業績やバランスシート、将来予測のリスク度合いなどさまざまな要素を織り込み形成される。ただし幾つもの要素を予測するのは個人投資家には荷が重く、対象を絞った方が精度を高めやすいし、誤った価格で投資すべきでない銘柄を買わずに済む――。

 そんな発想から、売上高成長率(増収率)の予測に主眼を置いて開発した。中村氏は同ツールについて、いわば「株価を将来業績に『翻訳』するものだ」と説明する。そして、個々の銘柄の深掘り分析とともに、日本だけで約3800ある銘柄の中から、分析の対象とする企業を絞り込む際にこそ、活用してほしいツールだという。

 松井証券が2020年12月に開設した「株の取引相談窓口」では、顧客対応業務において、従業員がproproの利用を始めている。松井証券の顧客サポート部長を務める浜名祐司氏は「各企業の業績の推移が一目で分かるほか、割高感の有無や買い時の見極め、伸び続ける会社であるかどうかを判断する際などに便利なツールだ」と話す。

 次ページでは、株式市場でこのところ人気銘柄となってきた主要各社について、このツールを用いて直近の株価が割高なのか、割安なのかを判定。「予想増収率」に基づいた新たな投資判断の仕方についてひもといていく。

 なお、気になる株価の割高度を判定した市場の人気銘柄とは、スノーピーク、チェンジ、エムスリー、MonotaRO、GMOペイメントゲートウェイ、ラクス、ジャストシステム、メドピアなど計18社だ。