デジタルトランスフォーメーション(DX)の大波が押し寄せるITベンダー業界だが、発表を終えたばかりの中間決算を見ると、企業ごとに明暗が浮き彫りとなった。特集『今仕込みたい「強い株」』(全15回)の#13では、この先も期待大のベンダーとはどこなのか、トップアナリストの分析に基づいて明らかにする。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
DXで一変したベンダーロックイン
中間決算に「淘汰」の予兆が表れた!
「ベンダーロックイン解消の影響が思っていた以上に表れた」。ITベンダー業界の中間決算結果について、同業界のトップアナリストである大和証券の上野真氏は驚きの声を上げる。
「ベンダーロックイン」とは、特定のベンダーの独自システムで顧客先との契約が長期間固定化すること。9月にデジタル庁が発足した際、その裏目的に、大手数社が政府系の情報システムを長年牛耳ってきたことへの切り崩しがあるなどとして取り沙汰された言葉だが、上野氏が言及しているのは企業向けの話だ。
何しろ同氏によれば、効率性を重視する欧米では、経費や人事などは共通したパッケージシステムを活用する企業が多く、例えばある人が違う会社に移っても同様の運用ノウハウが通用する。ところが、日本では企業ごとの非効率な独自の業務体制が放置され、ITシステムも個社ごとに仕様をカスタマイズせざるを得ないケースが多かった。
さらに言えば、日本企業では情報システム部門が軽視され、受託開発会社にシステム開発を丸投げすることも珍しくなかった。半ば惰性で運用・保守代をベンダーに支払い続けた結果、ベンダー側もシステムの独自仕様によるブラックボックス化などを進め、甘い蜜を吸い続けるようなケースが多発していたのだ。
ところが、コロナ禍を機に加速したデジタルトランスフォーメーション(DX)が状況を一変させた。
日本でも、DXの重要性が認識されるにつれ、ITシステムを用いたビジネスモデルや業務プロセスから組織の在り方までを抜本的に変革する流れが台頭。ベンダーとの関係についても、大きく見直す動きが加速しているのだ。
最もこの打撃を受けるのが、オンプレミス(自社でのサーバー保有)による従来型のインフラ構築を続けてきた受託開発会社。従来の顧客からノーを突き付けられれば、もはや他社と差別化できるような強みは失われてしまう。下図の通り、企業側のIT投資への意欲は堅調だが、競争力の低いベンダーは恩恵を受けられず、二極化が進んでいく。
そこで発表されたばかりの半期決算に、DXによるベンダー「淘汰」の予兆が表れたというわけだ。次ページでは、今後高成長や株高に期待できるベンダー、落ちぶれるベンダーは具体的にどこなのか、主要11社の決算や株価の動向に基づき、明暗を明らかにする。