患者数○人、死亡者数○人――。

 2003年のSARSの恐怖が蘇る。毎日増える感染者数、その数字が新聞の見出しとなって掲載されるのだ。さすがに怖くなってくる。大気汚染程度では頑としてマスクをしなかった上海住民も、さすがに「人から人」への感染の可能性を恐れてか、カラフルなマスクの着用が見られるようになった。

 鳥インフルエンザウィルスによる被害は4月10日時点で、中国全土で感染者33人、死亡者9人に増えた。そのうち上海市では15人が感染し5人が死亡するなど、高い比率を示している。

「感染者は農村部が多い、私たちは大丈夫」(会社員・女性)、「死亡者は高齢者、僕たちは免疫力があるから」(大学生・男性)と楽観論も聞こえるが、実は上海市内でもあちこちに影響が出ている。同日午後、筆者は街に繰り出し、鳥インフル影響下の上海を歩いてみた。

上海市民を襲う鳥インフルエンザ<br />怖いのは「安心して食べられる食品」がなくなることPhoto by Konatsu Himeda

鶏料理チェーン店はガラガラ
活きた鶏の取引量もダウン

 まず中国でも人気のおなじみKFCを訪れてみた。いつもは、学校の下校時刻である5時前後から、小腹をすかせた学生たちがここでたむろして店内が賑わっているのだが、案の定ガラガラだった。

 だが、KFCはすでにこうしたリスクも織り込み済みと見える。上海のKFCは、「エビバーガー」や「ビーフストロガノフ風ぶっかけご飯」など、鶏以外のメニューの比率を高めているのが近年の特徴的だ。過去にKFCの鶏がホルモン剤投与でマスコミの標的にされるなど、食品問題で叩かれてきた教訓だろう。