11月中旬、米マイクロソフト(MS)のスティーブ・バルマーCEOは、12年ぶりに秋葉原の電気街を訪れていた。今回の来日の主たる目的は、日本のコンシューマPCの市場動向を把握すること。秋葉原訪問は、後述するウィンドウズ デジタルライフスタイルコンソーシアム(WDLC)の設立と並んで、バルマーCEOが最重視したスケジュールだった。地上波デジタルTVチューナー内蔵のPCや、PCとほかのAV機器との連携を提案するコーナーなどを熱心に見て回った。

 「今日は特別な日となる。日本発のグローバル製品を、日本でグローバルローンチ(世界同時発売)することができた」(グルーゼン・デル上級副社長)。11月19日、デルは、日本市場のニーズに応えるために開発した、モニター・PC一体型(オールインワン)のデスクトップPCを、日米で同時発売した。

 HPもコンシューマ市場で攻勢に出る。「日本の顧客が求めているのはただ安いだけのPCではない。格好よくて、見せびらかしたくなるようなモデルを充実させ、2ケタシェアを狙う(現在は6%程度)」(岡・日本HP副社長)。画面に触れるだけでネット閲覧などができ、画面に直接手書き入力もできる「タッチスマートPC」など、戦略モデルを続々投入中だ。

 エイサーは「他社より数パーセントは多い」(業界関係者)販売店への販売手数料を武器に、日本での販路拡大を仕掛けている。

 並み居るPC業界のトップ企業が、こぞって日本市場に熱い視線を注いでいる。

日立は全面撤退を決断

 ところが、日本のPC市場の現状を見る限り、決して楽観できる状態ではない。

 「価格競争が激化してPC事業の営業利益はかつかつ。先行きは厳しいと判断した」(中井幸一・日立製作所クライアント本部長)

 今年3月、日立はビジネス市場向けPCの開発・生産から撤退し、HPから商品供給を受ける決断を下した。さらにその後、コンシューマ分野でもPCの開発・生産を停止。今後はビジネス市場で、得意とするサーバビジネスと相乗効果が望めるシンクライアント(記憶装置を持たないセキュリティ対策用端末)分野に開発・生産をシフトする。

 日立がPC事業の大幅な見直しを迫られた背景には、日本市場の成長鈍化がある。