海外ではクラウドファンディング(以下クラファン)を利用して音楽アルバム作成をしているメジャーアーティストが増えています。「メジャーアーティスだったらクラファンを使う必要なんてないんじゃない?」と思う人もいるでしょう。しかし、アメリカにおいてはメジャーアーティストがクラファンを利用するというのはごく一般的なことになっているのです。

 本連載の5回目で、アメリカ最大手クラファンサイトの「キックスターター」において、最もプロジェクト掲載数の多いカテゴリーは音楽だと述べました。同サイトでは、これまで音楽カテゴリーにおいて44,851のプロジェクトが立ち上がり、成功率は51%、181億円(1ドル120円計算)の資金調達に成功しています(2016年3月1日現在)。日本においても同様で、日本大手クラファンサイト「キャンプファイヤー」の最多掲載カテゴリーは音楽です。このように、クラファンと音楽は親和性が高いのです。
 その中、2016年度の米グラミー賞では、キックスターターで資金調達を受けた4作品がノミネートされました。前年の2015年も7作品がノミネートされ、そのうち2作品が最優秀賞を受賞するという快挙をなし遂げています。その功績は、米国で最も権威のある音楽チャート誌「ビルボード」でも大きく取り上げられました。

 

2016年グラミー受賞作品 

Miguel Zenón『Identities Are Changeable』(ラテン・ジャズ・アルバム賞)

Cedric Burnside『Descendants of Hill Country』(ベスト・ブルース・アルバム賞)

2016年グラミー賞の4つのノミネート作品は<br />クラウドファンディングからはじまった

Andrew Norman『Play』(コンテンポラリー・クラシカル・コンポジション賞)

Nashville Symphony『Joan Tower』(コンテンポラリー・クラシカル・コンポジション賞)
 

2015年グラミー受賞作品

Mike Farris 『Shine For All The People』 (ルーツ・ゴスペル・アルバム賞)

Jo-El Sonnier『The Legacy』 (リジョナル・ルーツ・ミュージック・アルバム賞)

Lee 'Scratch' Perry『Back on The Controls』 (レゲエ・アルバム賞)

Far Cry『Dreams &Prayers』(小規模アンサンブル・パフォーマンス賞)

Antonique Smith『Hold Up Wait A Minute (Woo Woo)』 (トラディショナル・R&Bパフォーマンス賞)

Brady Rhymer & The Little Band 『That Could:Just Say Hi!』 (子ども向けアルバム賞 )

Jeremy Fox『All My Tomorrows』(アレンジメント・インストゥルメンタル・ボーカル賞)