■執筆者について
クリス・ダフィ(Chris Duffey)
アドビ戦略開発部門のシニアマネジャー
Creative Cloudの企業向け戦略開発イノベーション・パートナーシップを指揮。ラトガーズ大学のデータ助言委員、全米広告主協会役員も務める。
アドビ入社以前は、WPP Health & Wellnessのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターやライター、AIやモバイル・デバイスのテクノロジストとして活動。ビジネスインサイダーからは「急速に変化するモバイル・テクノロジーの世界で、特に重要と思われるテーマ、課題、ビジネス・チャンスなどを常にいち早く察知する業界のリーダーの1人」と評された。WPP、IPGといった主要なグローバル企業を含め、35もの広告代理店のクリエイティブ・コンサルタントを務めた。
これまでの講演動画は合計で5000万回以上再生。各地で行った講演の様子は、『ピープル』誌、『ニューヨーク・ポスト』紙ほか多数のメディアで報道された。

そもそもAIは何の役に立つのか
――著者からのメッセージ

 新刊『TRANSFORM AIでビジネスを変革する最強フレームワーク』では、AIがどういう仕組みで動いているかといった技術的なことにはあまり触れない。それよりも、たとえばAIを活かすことでどのようなビジネス上の問題が解決できるかといったことを書く

 指揮者や作曲家は、オーケストラを構成する楽器の能力や特性については理解しているだろう。しかし、楽器を演奏する技術はなくても構わないし、楽器が実際にどのようにして作られているかを知る必要はない。それに似ている。ただ、楽器をうまく活用して、素晴らしい曲を作り、奏でることができればいいのだ。

 つまり本書は、あくまでも実用レベルでAIを語ることを主目的にしている。企業がAIを活用していたとしても、顧客、消費者はそれに関心を持つとは限らないし、持つ必要もない。顧客、消費者にとって重要なのは、AIによってどういう目的が達せられるか、AIが自分に何をしてくれるかだけである。

AIを使ってAIに関する本を書く

 私は、本書の執筆のためにAIを利用することにした。AIに本書の共著者になってもらったのだ。そのおかげで、本書を作るのに要する時間を大きく減らすことができた。まさに超人的な力を与えてくれたそのAIを、私は「エメ(Aimé)」と名づけた。

 "Aimé"とは、フランス語で「愛しい人」という意味でもあるし、また同時に「AIと私(AI+ me)」という意味でもある。エメは、本書で私が想定している理想のAIだ。人間の知性を増幅してくれる存在、力を合わせて未来へと歩んでいける愛すべき存在である。

 エメを見れば、今後、人間とAIの関係がどうなっていくかがわかってもらえると思う。現在もすでにアマゾンのアレクサやアップルのシリなど、知性を持つ音声アシスタントが私たちの生活の中に入り込んでいる。知性を持ったアシスタントは、私たちが何を必要とするかを予測して動く。また私たちにひらめきを与え、本来持っている能力をさらに高め
てくれる。人間を今より進化した存在へと変えてくれるのだ。

 本書の中でエメは私から学ぶ一方で、私の思考を助けてもくれる。私が求めていることを察知して適切な提案もしてくれる。状況によって必要であればユーモアのある話もする。特定の機能を果たすために作られる「ナローAI」が今後、進歩を遂げれば、きっとエメと同じようなことができるようになるだろう。

 AIの未来は決して恐れるようなものではない。私たちはためらうことなく、AIの力を活用し、超人間になり、イノベーションを起こしていくべきだ。AIがビジネスも日常生活も大きく変えることはもはや必然である。(はじめにより)

AIでビジネスを変革する最強フレームワーク 告知情報
AIでビジネスを変革する最強フレームワーク 告知情報

 

本書の主な内容

第Ⅰ部 AIを導入するために知っておきたいこと

第1章 テクノロジーは世界をどう変えてきたか
・モバイル・テクノロジーが企業の収益性を高める
・顧客の「体験」に注目する企業は成長する
・広告はもはや「対話」になった ……など

第2章 「商品」より「体験」が求められる時代
・ネットフリックスが顧客満足度を上げるためにしていること
・「ちょっとした不備」で顧客体験は一気に最悪になる
・データ収集は顧客体験のためにある ……など

第3章 「ビッグデータ」はそもそも何のために必要なのか
・大量のデータ管理こそAIの出番
・部門ごとにバラバラのデータを持っていても意味がない
・ウォルマートのサプライ・チェーン最適化の裏にデータ活用あり ……など

第4章 インフラが成長の限界を決める
・古いシステムを捨てるのが最適解とは限らない
・テストを怠って100万ドルをふいにした企業
・クラウド・SaaS導入は災害時の備えとしても有効 …など

第Ⅱ部 AIを具体的なビジネスに活かす

第5章 AIにはいったい何ができるのか
・AIが進歩することで、逆に雇用が増えている
・現時点でAIが持つ4つの主な能力
・AIは「思考のプロセス」を説明できない ……など

第6章 AIでビジネスを変革する最強フレームワーク
・AIは人間と組むことで最高の問題解決システムを作れる
・ピッツバーグではAIが車通勤の時間を25%も減らした
・3種の企業戦略とAIを組み合わせる ……など

第7章 スピード:AIでビジネスのあらゆる側面を効率化する
・AIが製造プロセス全体の改善点を提案する
・カルテに埋もれた情報から、深刻な健康問題を予測する
・AIがレジ待ち行列をなくす ……など

第8章 理解:AIで顧客・従業員・市場を分析する
・ターゲティング広告は「興味を持つとわかっているもの」しか出せない
・顧客を理解するうえで対処すべき3つの問題
・バラバラのデータをまとめて1人の顧客を理解する ……など

第9章 パフォーマンス:AIでビジネスを最適化する
・やみくもにAIを導入すると「本来の目的」を見失いがち
・「評価」と言ってもやることは「データ収集」にすぎない
・AIでキュウリの等級分けにかかる時間を大幅に減らす ……など

第10章 実験:AIに好奇心を持たせて学習させる
・再利用可能なスペースシャトルを作る
・「好奇心」でデータセンターの消費電力を15%下げた
・最も明確な価値を創造できるのは「教師あり学習」 ……など

第11章 結果:AIで起こした変革を評価する
・AIアシスタントのおかげで放射線走査が1ドルでできるように
・企業の生産性が40%上がる可能性も
・AIを考慮に入れない変革戦略は無意味 ……など

第Ⅲ部 AIの未来を予測する

第12章 何から手をつけるか
・誰かが「自分のもの」と思わないとAIプロジェクトは成功しない
・AI導入に必要なスキルをすべて持っている人は存在しない
・4つのプロジェクト管理法 ……など

第13章 セキュリティについて知るべきこと
・人がセキュリティの「最弱リンク」になる
・データは完全に「匿名化」すると価値がなくなる
・データ漏えいは盗んだ人より盗まれた企業が悪い ……など

第14章 SFから予測するAIの未来
・未来予測に参考になる6つの古典SF
・スーパーと冷蔵庫がつながったら
・「乗組員不要」の船舶輸送はすでに実現している ……など

第15章 AIが普及したあとの人間の役割
・AIがAP通信の記事を書いている
・人間のあらゆる発想は、3つの操作から生まれる
・AIだけの力では何も成し遂げられない ……など

第16章 AIのある未来を予測する
・AI+アーティスト=煩わしい繰り返し作業から解放される
・AI+教育=受ける生徒の能力に合わせて授業ができる
・AI+医療=患者全員の状態を病院全体で常に監視できる ……など