四模試の偏差値はどのように異なっているのか
図1と図2には、四谷大塚の合格可能性80%「偏差値」で64以上の各校の初回入試を取り上げてある。同じ「偏差値」では、男女別学校、私立共学校、国公立校の順に並べてある。公立中高一貫校については東京都立小石川中等教育学校のみを載せた。
実際の入試での実倍率(受験者数と合格者数の比)は「偏差値」にも反映する。難関・上位校を例に見ると、一般に、男子が集中傾向にあり実倍率3倍程度なのに対して、女子は分散傾向にあり実倍率2倍程度となる。図2で、サピックスの女子難関校の「偏差値」が他の模試よりもだいぶ低めに出ている理由の一つでもある。
高い学力層の受験生が模試の志望校として挙げれば、その学校(入試)の「偏差値」は上がる。サピックスと四谷大塚や日能研の偏差値で数値の違いが大きく見られる学校は、超最難関校狙いのサピックス生があまり志望先に挙げなくなっているのだろう。筑波大学附属駒場(筑駒)、開成、聖光学院が「サピックス男子御三家」になっており、同様に桜蔭、豊島岡女子学園、女子学院が「サピックス女子御三家」となっている。
日能研と四谷大塚の「偏差値」は微妙に異なっている。その理由として考えられることの一つが、模試受験生が在籍する塾の「推し」が異なる点にあるかもしれない。神奈川発祥の日能研は、東京進出の際に麻布の合格実績でアピールしたこともあり、いまも麻布の人気が高い様子もうかがえる。四谷大塚では早稲田実業の人気が例年高い。
一般的な模試は受験生の学力水準を測るものであり、特に中堅校の志望者にとってこの「偏差値」は重要な判断材料となる。一方、特徴的な入試問題の多い難関校での判定には、志望校別に設定された模試なども併用した方がいいだろう。
まずは「合格率50%偏差値」を基準に第一志望校を思い描き、夏を通じて5ポイントアップを目指したい。一般に、自分で学力を伸ばすコツをつかめるような受験生以外は、10ポイント伸ばすには、塾での一斉授業では不十分であり、さらにプロの手を借りる必要も出てくるだろう。
「偏差値」にはいろいろあることを実感していただけたと思う。新型コロナ禍を挟んで、各校の「偏差値」はどのように変動したのか、次回以降で具体的に見ていきたい。その年々の受験生の志向が偏差値には反映されている。各模試における第一志望者数の動向なども検討しながら、2025年入試の動向予測にも今後反映していきたい。